こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラブ・アゲイン

otello2011-11-21

ラブ・アゲイン CRAZY, STUPID, LOVE.

ポイント ★★★
監督 グレン・フィカーラ/ ジョン・レクア
出演 スティーヴ・カレル/ライアン・ゴズリング/ジュリアン・ムーア/エマ・ストーン/ジョン・キャロル・リンチ/マリサ・トメイ/ケヴィン・ベーコン
ナンバー 276
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


テーブルの下で足を絡ませ、磨き上げた靴のつま先で囁きあう男と女。ディナーの後の愉しみを先取りするかのようなエロティックなショットの直後、冴えないスニーカーを履いた男の足が映される。もちろん会話は弾まず女は退屈している。そんな、男の魅力磨きを怠った夫を見限った妻の苛立ちを足元のみで表現する導入部はセクシーなほど洗練され、たちまち物語の中に引き込んでくれる。映画は「中年の危機」に瀕した夫婦と家族が織りなす様々な愛の形を通じて、彼らのソウルメイトを探す旅を追う。その過程で、恋という厄介な病気は、人を劇的に変える力をも持つことを教えてくれる。


妻のエミリーに離婚を切り出されたキャルがバーで飲んだくれていると、ナンパ師のジェイコブに声をかけられる。キャルはイケてるオヤジを目指すべくジェイコブの指南を受け、ファッションセンスを改造してもらう。


変身したキャルは次々と女を口説き一人暮らしの寂しさを埋めようとするが、エミリーへの未練は絶ち難く胸の空白は満たされない。一方でジェイコブは司法研修生のハンナに直感を覚える。さらに息子のロビーがベビーシッターのジェシカに熱を上げるが、なぜかジェシカはキャルに憧れている。キャルを取り巻く人間関係は複雑に絡み合うが、みなフリーセックスを謳歌しながらも魂のレベルで惹きつけ合う異性を探し求めている。意外に狭い世界の中で、男としてのキャルの気持ちのほかにも、息子や娘を持つ父親としてのキャルの気持が濃やかに再現されて共感を呼ぶ。


◆以下 結末に触れています◆


結局、キャル、ジェイコブ、ロビー、3人はそれぞれ心の命じるままに一人の女を愛そうとする。そこに浮かび上がるのは家庭への回帰。人生における幸福とは物質的な豊かさではない、愛情と信頼で結ばれた相手を見つけることだという手垢のついたテーマながら、巧みな伏線と先の読めない展開、コミカルな演出とエスプリのきいたセリフで最後までテンポよく楽しませてくれる作品だった。


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