こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アニマル・キングダム

otello2011-11-23

アニマル・キングダム ANIMAL KINGDOM


ポイント ★★★*
監督 デヴィッド・ミショッド
出演 ジェームズ・フレッシュヴィル/ジャッキー・ウィーヴァー/ベン・メンデルソーン/ジョエル・エドガートン/ガイ・ピアース
ナンバー 269
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


他愛のない兄弟げんか、食事の支度をする母etc. 一見どこにでもある、知的ではないが強い絆で結ばれた家族。ところが彼らの正体は強盗や麻薬を扱う粗暴犯で、平気で人を殺める。警察の監視対象となる悪党であるにもかかわらず、あまり切迫感もなく善良な市民と変わらぬ日常生活を送っている彼らに強烈な違和感を覚えた。それは主人公も同じ、孤児となった自分を温かく迎え入れてもらった上、意外に居心地のいい境遇に戸惑いつつも、なんとか悪事からは距離をおこうとする様子が痛々しい。映画は、犯罪を生業にする一家の世話になった少年が、次第に麻痺していく正義感を必死でつなぎとめようとあがく姿を描く。


17歳のジェイは、母の急死で祖母・スマーフに引き取られる。同居するおじたちは警察に見張られていたが、ある日長兄・ポープの親友が刑事に惨殺されると、おじたちは報復に2人の警官を射殺する。


盗難車の手配をしたことからジェイも逮捕され、リッキー刑事は彼の切り崩しにかかる。親族を警察に売り渡したくはないがポープたちの行動にも嫌悪感を抱いているジェイは、“男”としてのプライドから決して口を割らない。取り調べの過程で、スマーフたちの本性を聞かされた戸惑いと、良心と肉親への情を秤にかける逡巡が、深い懊悩となってジェイにのしかかるが、あえて彼の感情を抑えて苦悩の大きさを強調する。


◆以下 結末に触れています◆


優しそうに見えるスマーフは、短慮で暴力的な息子たちを見事に操り、警察も舌を巻く情報網を持っているのか、あらゆるところに手を打ってポープたちを釈放させる。一方、リッキーと話したジェイは一家を裏切ったと判断され、ガールフレンドを殺された上にポープたちに命を狙われる。警察が用意したセーフハウスですら安全とはいえず、もはや逃げる場がない。追い詰められたジェイは、そこでやっと憎しみに火をつけるのだが、その先に待つのは絶望。しかし、救いのない運命の中でもがくジェイにとっては、絶望ですら再生へのきっかけとなる甘い囁きに聞こえたのではないだろうか。。。


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