こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

果てなき路

otello2011-12-05

果てなき路 Road to Nowhere

ポイント ★★★
監督 モンテ・ヘルマン
出演 クリフ・デ・ヤング/シャニン・ソサモン/ウェイロン・ペイン/ドミニク・スウェイン/タイ・ルニャン
ナンバー 257
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愛憎と陰謀、運命の女と謎の女、嘘と秘密、混沌と秩序、そして創作と現実。それぞれ相反する要素が境界線を越えて複雑かつ不規則に入り混じり、見る者の感覚を強烈に刺激する。時に共鳴し時に反発するそれらの映像は、再構築すればおぼろげながら全体像が現れるが、それでも依然大きな余白を残して、この作品のヒロインのように決して素顔を見せてくれない。物語は、ある地方都市で起きた殺人と公金横領を題材にした映画を企画した監督が、製作途中で新人女優の魔力に魅入られていく。その過程で、撮影現場にうごめく正体不明の男と女、俳優やスタッフの思惑、何より不条理渦巻く映画業界の実態をミステリアスな雰囲気で描く。


田舎町の事件を下敷きにした新作映画の脚本が完成しキャスティング中の映画監督のミッチェルは、偶然・ローレルという無名女優を発見する。ローレルの魅力に抗えなくなったミッチェルはいつしか映画そのものを作り変えようとする。


保険金査定員のブルーノという男が言葉巧みにミッチェルに近付き、事件の真相を暴こうとする。ローレルが劇中演じるヴェルマが愛人を利用して多額のカネを横領させ死を偽装したと推理、しかもローレルがヴェルマ本人だと確信している。このあたり、撮影中の話なのか、脚本に書かれたシーンなのかの説明はまったくない。だからこそ疑問が回答に結びつかず、ミッチェルと共に出口のない迷路に迷い込んだような気にさせてくれる。


◆以下 結末に触れています◆


ブルーノの暴走はさらに続き、ついには内容にまで口出しし、撮影の邪魔をするようになって、ミッチェルは彼をクビにする。狂っているのはミッチェルか、ブルーノか、それともローレルが本当は何かを企んでいたのか。そんな妄想が爆発し、映画製作は破綻してしまう。その後プロローグのパソコンでDVDを見ている男女のシーンに戻るわけだが、要するに監督にとって映画の中の出来事は虚構も含めてすべてが”真実”なのだ。人を喰ったオチに思わず唸ってしまった。


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