こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬

otello2011-12-09

ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬
JOHNNY ENGLISH REBORN

ポイント ★★★
監督 オリヴァー・パーカー
出演 ローワン・アトキンソン/ジリアン・アンダーソン/ドミニク・ウェスト/ロザムンド・パイク
ナンバー 286
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


眉毛を上下に激しく動かしたり鼻の下を長く伸ばしたり両肩をすくめて固まったり…。めまぐるしい顔の筋肉の変化はシリアスな心境を表現しているのだが、シチュエーションは極めて滑稽で、かつハラハラさせる。そのギャップをネタにしたアイデアの数々は吉本新喜劇風のベタと英国エスタブリッシュメント風の洗練が同居する斬新な空間。映画はそんなユニークな世界の中で、007を見事にパロディ化している。笑えるシーンでも控えめに、笑えないギャグもどこか心に残る、そして見え透いたオチは鼻息を漏らすような映像の数々がしばし時間を忘れさせてくれた。


大失態を犯しチベット山中の寺院で武術修行中のジョニーにMI7から帰還命令がでる。新たな任務は英中首脳会談を妨害する組織の計画を食い止めること。ジョニーはカギを握る人物に会うために見習いスパイのタッカーとともに香港に飛ぶ。


猥雑な街並みで身軽な若者を追い、特製車いすで自動車やバイクの追跡をかわし、山頂の要塞とケーブルカーで激しい格闘を見せる。全編にわたってスピード感あふれるアクションが展開されるが、折々でジョニーとタッカーがへまをやらかし、それがばれないように何とかごまかそうとする仕種がおかしい。さらに、ジョニーの命を狙う老婆の殺し屋と上司の母親を間違える場面でみせるばつの悪い表情が胸をくすぐる上に、ラストへの絶妙の伏線になっていて大いに楽しませてくれる。


◆以下 結末に触れています◆


やがて英中首脳会談が催され、そこでMI7内の裏切り者の手によってジョニーが罠にはめられ暗殺の実行犯にされてしまうが、冒頭の心身修練が功を奏し窮地を脱する。クライマックスにおいても相手の蹴り上げ攻撃に対して鍛錬の成果を示すなど、チベットでのエピソードをきちんと物語に生かしているあたり、構成がしっかりしていて単なるコメディ映画以上の奥行きが堪能できた。ローワン・アトキンソンがエンドロールで見せるナイフさばきは、肉体性こそがコメディの神髄と宣言しているようだった。


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