こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ペントハウス

otello2011-12-15

ペントハウス Tower Heist

ポイント ★★★
監督 ブレット・ラトナー
出演 ベン・スティラー/エディ・マーフィ/ケイシー・アフレック/アラン・アルダ/マシュー・ブロデリック/ティア・レオーニ/ガボレイ・シディベ 
ナンバー 290
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


タワーレジデンス最上階の専用プール付き居住区でひとり暮らす投資家と、ビルの住人のためにサービスを提供する従業員たち。持てる者は下々の者に王のように振る舞い、スタッフは笑顔で彼らの機嫌を伺う。舞台となった建物内部の日常はまさに21世紀米国における格差社会が凝縮されていて、強欲でどこまでも小狡い男だがいつも柔和な表情を崩さない投資家をアラン・アルダがクールに演じ、カネ持ちの面の皮の厚さを憎々しげに表現する。ある意味、アメリカンドリームの体現者である彼は、庶民の夢を喰って現在の地位を築いていた、映画はそんな資本主義社会の矛盾を見事に衝いている。


NYの超高級マンションのマネージャー・ジョシュは大勢のスタッフを束ねる立場で忙しく働いている。ある日、ペントハウスに住むショウが投資詐欺で逮捕されるが、ジョシュは従業員の年金運用をショウに任せていた。


1000万ドルの保釈金は簡単に出せるのに、従業員の年金は一切返さないショウ。投資はギャンブルと開き直るショウにジョシュはキレ、ショウが部屋に飾る「S・マックイーンのフェラーリ」をぶち壊してクビになってしまう。だが、他の従業員は職を失うのを恐れ泣き寝入り、弱者は抵抗する気力すら失っている。さらにカネを奪い返す決意をしたジョシュと彼の仲間がプロの泥棒に弟子入り、度胸試しに万引きしてこいと言われ、他人のモノや財産を盗むことに免疫を植えつけるあたり、社会制度やモラルが末期的になっているのを象徴していた。


◆以下 結末に触れています◆


ジョシュたちは綿密に計画を立て実行に移すが、所詮は素人、すぐに予定が狂う。その過程でゴンドラやエレベーターを使ったハラハラさせるシーンも盛りだくさんで、最後まで楽しませてくれる。結局は予想通りの結末を迎えるが、もはや良心は貧乏人の言い訳、カネが欲しければ盗むか奪い取れというメッセージがあまりにもリアルで、本来コミカルな作品なのにその切実さに背筋が寒くなった。


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