こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

宇宙人ポール

otello2011-12-26

宇宙人ポール PAUL

ポイント ★★★
監督 グレッグ・モットーラ
出演 サイモン・ペッグ/ニック・フロスト/ジェイソン・ベイトマン/クリステン・ウィグ/ビル・ヘイダー/ブライス・ダナー/ジョン・キャロル・リンチ/シガーニー・ウィーバー/セス・ローゲン
ナンバー 305
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


60年に及ぶ軟禁生活ですっかり米国の大衆文化に馴染んでしまった宇宙人。人間より高い知能や伝達能力を持っていてもひとりでは無力、そんな彼が旅の友に選んだのは冴えないオタク二人組だった……。物語は研究材料として米国政府に身柄を秘匿されていた宇宙人が施設を脱走し、仲間の元に帰ろうとする道中で種族を超えた友情を結ぶ過程を描く。発達した頭部と大きな目、貧弱な肉体と細長い手足、映画は過去の「宇宙人モノ」のエッセンスを随所にちりばめたうえ、むしろそれを逆手にとった小ネタの数々で笑いを取る。その手の込んだ構成が単なるコメディ以上の洗練を感じさせる。


米国のコミケに参加した英国人・グレアムとクライブはUFOゆかりの地巡礼の途中で事故車と遭遇、ポールと名乗る宇宙人と出会う。命の危険を察して逃げ出してきたというポールは二人に助けを乞い、3人の逃亡が始まる。


あらゆる宇宙SF映画やコミックに精通し、登場人物になりきったり原作者に憧れているのに、いざ本物の宇宙人に対面すると卒倒してしまうクライブと驚きを隠せないグレアム。空想の中では自分こそがヒーロー、だが現実に危機が降りかかると足がすくんでしまう。一方でポールも彼らを頼らざるを得ない。予定外の冒険は彼らに勇気と行動力を与え、平凡な日常からの脱却と、あきらめない強さや自信をよみがえらせていく。長年の地球暮らしでポールが人間の本質を理解し、グレアムとクライブの気持ちに気を遣いながらも、俗っぽい英語や下品なマナーで心を通わせていくポールの姿がコミカルかつ温かい。


◆以下 結末に触れています◆


一行が訪れる米国中西部では、いまだに男二人組はゲイと決めつけたり、よそ者に対する嫌悪感が強かったり、キリスト教原理主義者が進化論を否定していたりする。そのあたりの、普段あまり外国人(エイリアン)が目にすることのない保守的な米国人像が新鮮だ。もちろん戯画化されてはいる、それでも、観光地だけでは見えてこない米国の一面もきちんと描写しているところが、この作品に奥行きを与えていた。


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