こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

TSY タイムスリップヤンキー

otello2012-01-12

TSY タイムスリップヤンキー

ポイント ★★★
監督 中川通成
出演 綾部祐二/福田沙紀/安達健太郎/上山竜司/木下ほうか/森口瑤子/宇梶剛士/有田哲平
ナンバー 303
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

強がってはいるが拳で白黒つける根性はない。カノジョはいるがイマイチ煮え切らない。チンピラにペコペコ頭を下げる父は物足りない。身の回りは不満だらけなのに、そのはけ口が見つからず、ナイフを振りかざすしか能がない中途半端な高校生。そんな少年が30年前にタイムスリップして、自分と同じ年頃の両親の思いを知るうちに、物事の筋を通すことの大切さを学んでいく成長の過程がコミカルかつ清々しい。’80年代の街並みとファッションや風俗は、懐かしさと温かさが同居し、親の世代には青春の残照を、息子の世代には新鮮な価値観の発見となってスクリーンを彩る。

父・三郎と喧嘩した翔太郎は、仲裁に入った母・潤子を突き飛ばしてしまい、潤子は危篤になる。病院の待合室でケガの治療に来た坂田と殴りあった瞬間に時空がずれ、見知らぬ原っぱに放り出される。

お互いのパンチの衝撃で30年の時をさかのぼる安易な設定ながら、レトロな商店街や学ラン・ボンタン・リーゼントでバイクにまたがる高校時代の三郎など、ディテールがリアルなのがうれしい。硬派で正道のツッパリを目指す三郎と、チャラチャラした格好で何でも面倒くさがる翔太郎は不良としての覚悟が足りないように見える一方で、後からタイムスリップしてきた翔太郎のカノジョ・愛里沙はコギャル風ではない真面目な生徒で、この時代の潤子と比較してもごく普通。父と息子は性格が違っても女の好みは似通っているあたり、思わず鼻息を漏らしてしまった。

◆以下 結末に触れています◆

現代での潤子が息を引き取ったと知った翔太郎と坂田は、潤子が三郎と結婚しなければ死を回避できると考え、二人のデートの邪魔をする。その後も、三郎の男としての生きざまに感化された翔太郎が、一念発起して自らの手で運命を変えてやろうという気になってナイフを捨てた素手の喧嘩に臨むなど、未来、つまり2011年の自分に影響を与えようとする。でも、他のみんなはより幸せになっているのに翔太郎だけは冴えないまま、というか「???」になっているオチには腹を抱えてしまった。。。

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