こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マイウェイ 12,000キロの真実

otello2012-01-16

マイウェイ 12,000キロの真実

ポイント ★★*
監督 カン・ジェギュ
出演 オダギリジョー/チャン・ドンゴン/ファン・ビンビン
ナンバー 12
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

戦争という巨大なうねりに呑み込まれた男たちの運命は、荒れ狂う時代の流れに乗って西へ西へと漂流していく。日本統治下の朝鮮、荒涼とした蒙満砂漠、雪と氷に閉ざされたシベリアの収容所、廃墟となった東欧の市街地、美しいフランスの海岸線。物語は憎しみ合いながらも銃弾・砲弾をかいくぐり、やがて固い信頼と友情を結ぶまでになる2人の数奇な半生を壮大なスケールで描く。日本兵による陰湿な朝鮮兵いじめ、朝鮮兵による仕返し、それでも危機に直面するといつしか力を合わせている。潔く死ぬよりは不器用でも生き抜くことを選んだ彼らの姿がまばゆいばかりの輝きを放つ。

少年期より長距離走のライバルだった日本人の辰雄と朝鮮人のジュンシク。マラソン五輪予選の裁定に不満を持ったジュンシクは暴動をおこしたため徴兵され、蒙満戦線送りになる。ジュンシクのいる部隊に辰雄が司令官として赴任するが、ノモンハン事件ソ連軍に惨敗し2人とも捕虜になる。

どれほど過酷な環境でもジュンシクはランニングを止めない。彼と同じ目標を捨て軍人の道を選んだ辰雄はジュンシクを苦々しく思っている。彼らのライバル関係は歪んだ上下関係になり、ジュンシクが大切にしていた運動靴を辰雄が没収したため、決定的な憎悪となる。それでも、ソ連軍の捕虜となって苦境を共にし、戦線を離脱してドイツに逃げるうちに同志のような絆が生まれるあたり、まさしく「男の映画」。走っているときだけ命を感じ、絶望的な状況でもオリンピックへの夢がジュンシクに希望を与える。そしてその思いを辰雄が受け継いでいく過程が、戦場に放り込まれたような迫力と臨場感にこだわった映像の中、激しくも美しく映える。

◆以下 結末に触れています◆

ただ、1928年に知り合った時の2人はまだ小学生くらいなのに、11年後のノモンハン事件では辰雄は大佐になっている。当時の日本軍では20歳そこそこで大佐にまで昇進できるものなのか。また、1980年代までは日本人は朝鮮人の名前を日本語読みしていたはずだが、劇中「キム・ジュンシク」と朝鮮語発音で呼ばれている。疑問に思えて仕方がない。。。

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