こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロボジー

otello2012-01-18

ロボジー

ポイント ★★★
監督 矢口史靖
出演 五十嵐信次郎/吉高由里子/濱田岳/川合正悟/川島潤哉/田畑智子/和久井映見/小野武彦
ナンバー 13
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

軽い気持ちでついてしまった嘘が、想定外の波紋を呼び、後戻りできなくなる。もはや事実は口が裂けても言えず、オロオロしながらも嘘をつき続ける。そんな男たちの感情が身にしみる一方、彼らの弱みに付け込んでやりたい放題する老人が痛快だ。物語は、人型ロボット開発チームがロボットの着ぐるみに入る爺さんと共に、ショーをこなす過程でいつしか友情と信頼を結んでいく姿を描く。いつ嘘がばれるかわからない、それでも逃げるわけにはいかない、サラリーマンの悲哀と独居老人の孤独、さらに企業人の隠ぺい体質といった社会問題をあぶり出す。

ロボット博に出品する「ニュー潮風」製作中の3人の社員は試作機を壊してしまい、やむなくロボットの中に人間に入ってもらう。オーディションで選ばれた鈴木は役になりきり、展示場で女子大生・葉子を事故から救ったせいで一躍マスコミの寵児になる。

「ニュー潮風」はショーに引っ張りだこになり、その都度鈴木がロボットの中に入る。コスプレ会場で鈴木が顔を出していても誰も正体をさらしているとは思わない、発想の裏をかいたシーンが楽しい。その後、3人は葉子の大学にも呼ばれるが質疑応答を逆手にとってロボットのアイデアを盗むあたりも、「自分が騙されるはずはない」という学生たちの思い込みを見事に利用する。一見、小心者の3人だが、実はかなり狡猾でしたたか、人は見かけによらないことをこの作品は繰り返し警告する。

◆以下 結末に触れています◆

コンプライアンス遵守が一層求められる昨今、一度不正に手を染めた会社員たちも、3人組のように最初は悪意なき小さな嘘が独り歩きして手に負えなくなったのだろう。そして我が身かわいさゆえ、嘘を上塗りする。矢口監督は彼らの行動をコミカルな演出で味付けするが、あくまで偽装工作の共犯者の立場を崩さない。ブラックユーモアに満ちたエンディングは、人間がいかにして良心を麻痺させていくかが非常にリアルに再現されていた。

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