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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

僕達急行 A列車で行こう

otello2012-01-19

僕達急行 A列車で行こう

ポイント ★★★
監督 森田芳光
出演 松山ケンイチ/瑛太/松坂慶子/貫地谷しほり/笹野高史/西岡徳馬/ピエール瀧/伊武雅刀
ナンバー 7
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

車窓からの風景を記憶に刻む者、モーターや車輪の音に共鳴する者、デザインや鉄の持つ風格・内装を味わう者、駅弁に舌鼓を打つ者etc。鉄道を愛する人々の楽しみは人によってそれぞれ違う。彼らは、自分の嗜好と違っていても批判的にならず他人の話に耳を傾け、蘊蓄を垂れたり自慢話は慎む。同好の士と繋がっていたいが、かといって相手の領域に土足で踏み込まない。そんな、ユルくて細いけれど、意外にしなやかな“鉄ちゃん”たちの人間関係が心地よい。大きなプロジェクトを任されていても、会社経営の危機に瀕しても、ガツガツしない。その生き方が絵にかいたような草食系男子だ。

大手不動産会社に勤務する小町はマンションを追い出されるが、テツ仲間の小玉の実家の寮に転がり込む。毎夜小町と小玉は鉄道談議に花を咲かせるが、すぐに小町に福岡転勤の辞令が出る。

小町にはあずさ、小玉にはあやめという、一応交際中の女性がいるのだが、小町も小玉もデートしているより電車に乗っている方がときめく。お互い“恋の悩み”を打ち明けても、 “女子の気持ちは分からない”の一言で片づけてしまう。また、小町の周りの女性たちは自己実現に熱心なのに小町は己が快適でいられるかどうかを大切にし、小玉も女好きの父がそばで手をまわしているのにあまり女性に関心を示さないなど、恋愛願望は極めて低い。後に九州企業とのタイアップを任された小町と小玉は、やっと仕事への情熱を見せるが、それもテツ仲間の社長と意気投合したから。好きなことなら頑張れる、まさしく21世紀の若者らしいメンタリティだ。

◆以下 結末に触れています◆

小玉は小町を無人駅にひとり残して去るが、あずさを密かに呼んで小町と二人きりにする。こんな状況でも小町は梓とキスするより列車の音に反応してしまう。“鉄道の魅力を理解しない女なんか面倒くさくてかまってられるか”という本音が透けて見え、その分鉄道に愛情が湧く。彼らの心が少しわかった気がした。。。

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