こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

はやぶさ 遥かなる帰還

otello2012-01-25

はやぶさ 遥かなる帰還


ポイント ★★★*
監督 瀧本智行
出演 渡辺謙/江口洋介/夏川結衣/小澤征悦/中村ゆり/吉岡秀隆/石橋蓮司/藤竜也 /山崎努
ナンバー 17
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

どれほどの困難に直面しても絶対にあきらめず、致命傷になりかねない二者択一を迫られてもチャレンジするほうを選ぶ。感情よりロジック、どんなときにも冷静さを失わず、信念はブレない。小惑星に着陸しサンプルを持ち帰る、気の遠くなるような計画のトップに扮した渡辺謙の抑制のきいた演技がこの映画を根底から支えている。部下に無理難題を押し付けても「できない」と言わせず結局やりとげさせる言葉の力と、スタッフを信頼し自分の判断にはすべての責任を負う有言実行の決断力。これぞまさにリーダーたる資質、決して熱くはならないが、圧倒的な存在感で関係者全員を動かしてしまう主人公の“人間力”が見事に再現されていた。

プロジェクトマネージャーの山口指揮の下で打ち上げられたはやぶさは、往路エンジントラブルなどに見舞われるが遠隔操作で修復し、小惑星イトカワに到着、2度目の着陸でサンプル採取に成功する。

地上の実験やシミュレーションの結果は宇宙ではほとんどあてにならず、はやぶさに故障が続発する。そんな“想定外”の不具合に対して、山口は常にエンジニアたちに“想定外”の対応を求める。ダメだと投げ出す前にもう一度データを精査し、そこから常識を転換した大胆な解決策を導き出す。論理的な科学者の非論理的な発想こそが科学を進歩させてきた歴史を、はやぶさの度重なる危機を克服した山口が身をもって証明するのだ。一方で、神仏を信じない山口が通信の途絶えたはやぶさが見つかるように神頼みする場面が、彼も完ぺきな人間ではないことをうかがわせ、親近感を覚えた。

◆以下 結末に触れています◆

さらに山口は、はやぶさに「最後に地球を見せてやりたい」などと、機械以上の愛情を感じるまでになるが、やっぱり山口と握手したスタッフの一人に“手の冷たい人は心が温かい”と言われると、論理的ではないと答える。彼の人柄が凝縮されていたシーンで、本当は非科学的な思いが物事を好転させることがあるのを知っているが頼りすぎを戒めている、あくまでダンディズムを貫くヒーローを描いた作品だった。

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