こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヒューゴの不思議な発明

otello2012-02-04

ヒューゴの不思議な発明 HUGO

オススメ度 ★★★★*
監督 マーティン・スコセッシ
出演 エイサ・バター・フィールド/クロエ・グレース・モレッツ/ジュード・ロウ/ベン・キングスレー/サーシャ・バロン・コーエン/クリストファー・リー
ナンバー 25
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

父との思い出を大切にしながら孤独に生きる少年と、つらい記憶を胸に秘め絶望と共に過ごしてきた老人。お互いを敵視していたはずの2人は未完成の機械人形によって出会う。何があったのか、何が起きるのか、文字を書く機械人形をもう一度動かすのは老人の過去を封印から解き放ち、少年の未来に希望を灯すこと。爛熟した文明と非人道的な貧しさが同居する1930年代のパリ、少年が飛び込んだ冒険と老人が生み出したトリックが共鳴し、運命となって交錯する。人間の夢を無限のイマジネーションで映像化する、これぞ言葉によって伝えられるだけだった“物語”に血肉を与える映画の原点回帰ともいえる作品だ。

パリ駅構内の時計係・ヒューゴは父が遺した機械人形の修理を日課にしているが、おもちゃ屋で部品を盗もうとして店主のジョルジュに捕まる。ヒューゴはジョルジュに機械人形の設計図を奪われ、取り戻そうとするうちにジョルジュの娘・イザベルと知り合う。

あらゆる悲しみを見つめてきたかのごとき機械人形の目は、ヒューゴに救いを求めているかのよう。それは作り手が、人形に託した己のメッセージを受け取ってもらう時を心待ちにしていたから。ハート形の鍵をまわして人形が動き出すシーンは息をのむほどの美しさで、精緻な機械の造形美と感情を持つかのようなしなやかで思わせぶりな動きを見せる。なによりその手に持ったペンが描きだす映画史上に残るワンシーンのイラストは驚愕に満ち、新たな期待に魔法をかけられた気分になる。

◆以下 結末に触れています◆

ヒューゴとイザベルはイラストに記されたサインを調べるうちに、ジョルジュこそ映画創成期に活躍したジョルジュ・メリエス本人であると気づく。戦争ですべてを失い、もはや世間から忘れられた存在だったメリエスに再び往時を語らせる場面は、映画こそ想像力が生み出した至高のアートであると再認識させてくれる。そして、「ハッピーエンドは映画の中だけ」というメリエス言葉は、「ハッピーエンドの映画こそ人々をハッピーにする」という思いとなってスコセッシ監督に受け継がれ、この壮大なファンタジーに瑞々しい命を吹き込んでいた。

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