こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE

otello2012-02-08

荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE

ポイント ★★
監督 飯塚健
出演 林遣都/桐谷美玲/小栗旬/山田孝之/城田優/片瀬那奈/安倍なつみ/井上和香/高嶋政宏/上川隆也
ナンバー 29
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

河童、金星人、男のシスター、星顔、鳥頭、鉄仮面etc. 河川敷の不思議な人たちは、自分の思いに正直に、そして助け合いながら生きている。世間の常識とはかなりズレた共同体、映画はその住人を立ち退かせようとする青年が体験するカルチャーショックを描く。価値観を共有できない人々とわかりあえるのか、主人公の苦悩はそのまま観客の驚きと戸惑いとなり、迷宮に取り残されたような感覚にいざなう。だが、言葉による説明が過剰な上、各々のエピソードは意外な展開というより予想しうる限り最もしょぼいオチが待ち受けている。不条理劇に意味を求めるのは野暮だが、せめて笑えるネタを披露してほしかった。

荒川河川敷の不法占拠者退去を任された行は、現地視察に出かけて橋から川に落ち、金星人の美少女・ニノに救われる。ニノに案内された不法占拠者の村には奇妙な人々が自給生活を営んでおり、行もリクと名付けられそこにキャンプを張る。

住人達は開発の名のもとに住処を追われる野生動物なのか、それともグローバル化の波に呑まれる新興国の国民なのか。いずれにせよ巨大資本によって従来の暮らしを脅かされる自然や人の象徴なのだろう。ならばなぜ彼ら守らなければならないのか、そこに説得力を持たせるためにも、ただの奇人変人ではなく、なくてはならない大切なものを持った人々だということを描くべきではないか。まあ、競争社会の勝者を運命づけられた行にとっては“価値のない人間”が存在していること自体が新鮮な発見だったに違いないが。

◆以下 結末に触れています◆

河川敷の村をあえてチープな世界観で統一し、ナンセンスを究めんとした志は理解できる。行がいちいちツッコミを入れたり、映画の残り時間を表示したり、コラージュを重ねたような斬新な映像表現にチャレンジするのもよい。それでも、この映画のノリはどこかピントがボケていてほとんど心に届いてこなかった。このツボにはまる人もいるのかもしれないが。。。

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