こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

青い塩

otello2012-03-02

青い塩

オススメ度 ★★*
監督 イ・ヒョンスン
出演 ソン・ガンホ/シン・セギョン/チョン・ジョンミョン/キム・ミンジュン
ナンバー 51
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

愛と呼ぶには息苦しく、友情と言うには強すぎる。仕組まれた出会いにも関わらず女は心を揺さぶられ、知らずに近づいた男は希望を託そうとする。暴力と死の世界、そのしがらみは足を洗った男にいつまでも付きまとい、懸命に生きる女の足を引っ張り続ける。物語は、引退して静かに暮らすヤクザの身辺調査を命じられた女殺し屋が、男と交流するうちに忘れていた感情を取り戻していく姿を描く。一方で男にも守るべき大切なものという思いが生まれ、逃げ殺し生きのびるうちにふたりは分かち難い絆を結んでいく。

料理教室に通うドゥホンはセビンと名乗る若い娘と隣り合わせになり意気投合する。だが、セビンはあるヤクザから依頼されドゥホンを見張る調査員だった。ある日、かつて所属していた組織の会長が交通事故に遭い、後継者を巡る諍いの火種がくすぶり始める。

セビンは元射撃選手。銃の扱いは超一流で拳銃もライフルも狙った的ははずさない。ドゥホンは実戦の経験が豊富で、洗練されたナイフさばきで襲い掛かるチンピラを軽くいなす。映画はそんな彼らのアクションと、孤独を埋め合わせるようにふたりが惹かれあう過程を交互に見せることで緩急をつけようとする。海に架かる壮大な橋、近代的なソウルの夜景といったスタイリッシュな映像は、ドゥホンの過去とセビンの未来を象徴しているようで、センチメンタルな中にも美しさが満ちていた。そして彼らが口にする手料理からは、暗殺指令を実行できないセビンと、彼女の正体に気づいてもなおセビンを信じようとするドゥホンの、切ないまでの優しさが溢れていた。

◆以下 結末に触れています◆

ただ、決して恋愛には発展しない父娘のような関係をはみ出さないふたりのシーンは命を狙われている緊張感に乏しい。追い詰められた者同士が頼れるのはお互いだけといった切迫感があればもう少し感情移入できたはずだ。あと、セビンは拳銃を左手で扱うのに、ライフルは右手指でトリガーを引く。この利き手の違いが後々伏線として活かされてくるかと思ったのだが。。。

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