こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

私の叔父さん

otello2012-03-06

私の叔父さん

オススメ度 ★★
監督 細野辰興
出演 高橋克典/寺島咲/松本望/山田キヌヲ/草野康太/長谷川初範/鶴見辰吾/松原智恵子
ナンバー 39
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

生涯で唯一心から愛したのは、幼いころから兄妹同様にすごした叔父だった。少女の憧れをそのままに大人になった女は、その気持ちを臆面もなく男に伝え、男はそんな女の態度にどう答えていいのか分からない。決して結ばれることが許されない濃い血縁、映画は禁忌の愛に身を焦がす女の繊細な胸の内を掬い取っていく。物語は古臭さを感じるベタな設定にもかかわらず、彼女のあらゆるしぐさや言葉の裏の意味は恐ろしくリアルで、笑顔の奥に隠された女の情念が痛いほど胸をかきむしる。そして彼女と彼女の娘の母娘二代にわたる愛に応えられない男のもどかしさと苦悩はもはや滑稽ですらある。

大学受験で上京した夕美子を預かった構治は、ふとしたはずみで夕美子の母・夕希子と過ごした1カ月の日々が脳裏によみがえる。一方、夕美子は妊娠、お腹の子の父は構治だと言い張る。

構治と夕希子の少年・少女時代に、何があったのか。親密だったのは確かだが、なにゆえ夕希子がこれほどまでに彼を思い続けるのか。まともな育てられ方をしていたならば理性が働くが、夕希子はブレーキが利かず、構治の自制心だけで危うい均衡を保っている。彼らの記憶の一つでも語られていたならば夕希子の感情にも説得力が出るのだが、スルーされているために、夕希子の挙動は理解不能の女心以上の印象が持てない。秘められた過去をほのめかしてこそ禁断の関係が際立つはずなのだが。。。

◆以下 結末に触れています◆

さらに、母の届かなかった思いを叶えるために夕美子までが途方もない戯言を口にする。構治にとって、疎遠になっている親戚の娘の世迷言は迷惑以外の何物でもないだろう。このあたり、コミカルに処理していれば“イケメン中年男の受難”と笑いとばせるのだが、構治は彼女の嘘を正面から受け止めようとする。もちろんそれは構治が自分の本当の父親ではと疑った夕美子の拙速にすぎないのだが、決して女心の不思議では済まされない深刻事で、それをわかったうえで認めてしまう構治も“なんだかなぁ”な感じ。不可解な男女の愛よりも、優しくしすぎると女はつけあがるのは確かなようだ。

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