こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラヴ・ストリームス

otello2012-03-28

ラヴ・ストリームス LOVE STREAMS

オススメ度 ★★*
監督 ジョン・カサヴェテス
出演 ジーナ・ローランズ/ジョン・カサヴェテス/ ダイアン・アボット/シーモア・カッセル/アル・ルーバン
ナンバー 74
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

かつては美しい姉、自慢の妻、やさしい母だったはず。だが、彼女の一途さゆえ行動に歯止めが効かなくなり、周囲の人々の気持ちを慮る余裕がなくなっていく。やがて限りなく狂気に近付き、近親者ですら遠ざけてしまう。物語は精神のバランスを崩した中年女の常軌を逸した言動と家族の反応を通じて愛の本質を問うていく。弟、夫、娘、ヒロインを取り巻く3人がそれぞれに抱く彼女への複雑な思いが切ない。もう過去へは戻れない、未来を背負っていく自信もない、諦観と絶望。運命として受け入れるしかない彼らの表情が感情をリアルに再現していた。

丘の上の一軒家で気ままに暮らすロバートの元に、離婚した姉・サラが転がり込んでくる。サラは離婚調停で親権を得るが、娘のデビーは父のジャックとの暮らしを選んだことで深く傷ついていた。

ロバートは作家として成功しているが、家に若い女を多数侍らしたりクラブ歌手の家に押し掛けたりとかなり非常識な男。ところが、彼以上にサラは病んでいると徐々に明らかになる。ふたりとも結婚生活に破れ頼れるのはお互いだけという状況で、サラはますますエキセントリックになり、ロバートは彼女を守ろうとする。ポニーやヤギ、アヒルやガチョウを家に持ち帰るサラを受け入れようとするロバート、そんな現状に眉をひそめるジャンクとデビー。ジャックとデビーを笑わせようとしてサラがひとりはしゃぐシーンは、その痛さとは別に、デビーの目には自分の体にも同じ血が流れているのではといった恐怖がありありと浮かぶ。ロバートやサラの思考が分かりづらいなか、デビーの繊細な心理が共感を呼ぶ。

◆以下 結末に触れています◆

映画はロバートとサラのエピソードを散文的に並べるのみで、一切の解釈は見る者に委ねられる。メリハリのない漫然とした映像にある時は苛立ち、予想外の展開にある時は目を見張る。理解も教訓も超越したストーリー、そしてオチも救いもない結末。頭に浮かぶいくつもの「?」が豊饒なイマジネーションとなって熟成されていく過程を楽しむべきなのだろう。。。

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