こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベイビーズ いのちのちから

otello2012-03-29

ベイビーズ いのちのちから BEBES

オススメ度 ★★*
監督 トマス・バルメス
出演
ナンバー 75
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

医療施設ではなく掘立小屋のような家で生まれた赤ちゃんは、土の上に寝かされ手づかみで食事をし、川の水を直にすする。病院で生まれた赤ちゃんは衛生的な環境に恵まれ機能的なおもちゃで知育されている。母に愛され家族に見守られていればどこでも子供は幸せ、そういう建前はさておき、やはりナミビアと日本の出産を比較したとき先進国の都市部に出生する幸運を感じずにはいられない。一方で、泥だらけ蠅だらけも人間は生きていけるものだと、日本人の過剰な清潔志向を皮肉っているようだ。

ナミビアの小さな集落で生まれたポニジャオは大勢の兄弟と共に育てられている。モンゴルの産院で生まれたバヤルは父のバイクで草原のゲルに帰っていく。東京のマリとサンフランシスコのハティも母子ともに健康で無事に両親のアパートに迎え入れられる。

カメラは4人の赤ちゃんの1年余りに及ぶ成長を記録していく。ほとんどの時間眠っているかミルクを飲んでいる生後間もない時期から、やがてハイハイ、捕まり立ち、1歳の誕生日を迎えるころには歩き出し意味のある言葉を発し始めるのは世界中どの国・民族も同じ。だが、赤ちゃんにおむつをはかせる日米とは違い、ナミビアやモンゴルでは基本的に垂れ流し。戸外に出ればだだっ広い土地がある人々にはトイレという概念はないのか。また、階段やドアといった赤ちゃんにとって危険なモノが少ないので基本的に兄弟が面倒を見ていて父親は子育てに参加せず、イクメンばやりの日米とは大違い。育児習慣からその国の文化的背景が見えてきて非常に興味深い。

◆以下 結末に触れています◆

モンゴル人は地平線まで続く草原にゲルを立て羊や牛を放牧しているが、ソーラーパネルで発電しパソコンなどのデジタル家電も持っている。ここにあるのは前近代と現代の融合、つまり人里離れた奥地に住んでいても最新の消費生活情報は手に入る暮らし。バヤルは将来故郷を捨て、豊かな物質文明を求めて都市、そして先進国に渡るのだろうか。。。

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