こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

第九軍団のワシ

otello2012-03-30

第九軍団のワシ THE EAGLE

オススメ度 ★★*
監督 ケヴィン・マクドナルド
出演 チャニング・テイタム/ジェイミー・ベル/マーク・ストロング/ドナルド・サザーランド/タハール・ラヒム
ナンバー 77
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

命より大切なもの、それは名誉。負け犬の烙印を押された父の汚名を返上するため、若者は敵地に旅立つ。彼に付き添う従者も、助けられた借りを返すために仕えると誓う。一度口にした言葉はそのまま約束となり守れなければ信頼を失う、そんな厳しいルールのなか、自らの信念を通して生きる男たちの生きざまが力強い。物語は、蛮族に持ち去られた「ローマ軍の誇り」を、若き将校がさまざまな困難に見舞われながらも奪還する姿を描く。文明と未開の境界線上に設けられた高い壁は、内側の平和を担保するが、外側の人々には憎悪の対象となる。ローマ帝国の栄光は兵士たちの勇気と鍛錬の賜物、一方で祖先の土地を奪われ家族を殺された地元民の恨みは消えない現実は、現代のイラクやアフガンを見ているようだ。

ブリタニア北方の砦に赴任した司令官・マーカスは戦闘で負傷、除隊となる。回復後、20年前に北の蛮族に破れローマ第九軍団のワシの紋章と共に行方不明になった父の消息を求め、奴隷のエスカと共に国境を越える。

エスカは剣闘士との決闘で死を恐れない気概を見せマーカスに救われるのだが、実はマーカスの父に打ち負かされたブリタニア軍隊長の息子。マーカスの素性を知り、復讐の念を抱きつつも恩義に応える忠誠心を見せる。蛮族の地ではマーカスの通訳兼ガイドを務めるが、彼の屈折した視線はいつか裏切るのではという緊張感を孕み、危険に満ちた2人の道中を更にスリリングにする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

合戦シーンにはCGを使わず、人間の息遣いが聞こえる臨場感にこだわった映像は、重量感たっぷりではあるが、スケール感に乏しく物足りなさを感じる。ふたりの逃亡シーンも派手なアクションは一切なく、視覚的には地味で一昔前の映画を見ている気分になる。深く刻まれた谷、霧のたちこめる森、鉛色の空と荒波と寒風吹きすさぶ蛮族の村、陰鬱な北の辺境の風景が、ヨーロッパ世界の最果ての雰囲気を見事に醸し出してはいたが。。。

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