こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜

otello2012-04-02

ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜 THE HELP

ポイント ★★★
監督 テイト・テイラー
出演 エマ・ストーン/ヴィオラ・デイヴィス/ブライス・ダラス・ハワード/オクタヴィア・スペンサー/ジェシカ・チャスティン/シシー・スペイセク
ナンバー 79
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人種差別をする者は、なぜ正しくないのか理解出来ないのだろう。育ってきた環境では当然だから、異議を唱える者に不快感を覚える。長年仕えた黒人メイドを“白人用のトイレを使った”だけでクヒにする女が、無知こそが偏見の源であると証明する。いや、黒人の能力に気づいてはいるがあえて見ぬふりをしているのかもしれない。物語は60年代前半の米国南部、まだ隔離政策が根強い時代に黒人たちの声を集めたヒロインの目を通して、彼女と黒人メイドたちが自立への一歩を踏み出す姿を描く。黒人奴隷を使役した過去が濃い地域では、黒人たちが力をつけていく過程は恐怖だったに違いない。

大学を卒業してミシシッピ州の故郷に戻ったスキーターは、NYの編集者に黒人メイドのインタビュー集の企画を売り込む。白人の報復を恐れる黒人たちだったが、料理上手なメイド・ミニーが解雇されたのをきっかけに重い口を開き始める。

白人主婦のリーダー格のヒリーは守旧派の代表格で、黒人メイドの現実に心痛めるスキーターと対立する。おそらくスキーター自身も大学で自由と平等と人権について学ぶまでは、黒人に対する意識は似たものだったはず。ヒリーはそんな彼女が許せない一方で、アフリカ人の救済チャリティを開くなど他国の黒人は援助しようとする偽善者ぶりを見せる。また、黒人メイドに子育てを任せ食事の用意もさせるのに、彼女たちを排泄には神経質になるなど、現代人の感覚からはばばかばかしいほどの不整合に満ちた50年前の米国南部の“常識”が驚きだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画はヒリーの他にも、黒人公民権運動のTV報道を黒人使用人に見せようとしない老婆や、自分の子供の教育を黒人乳母にまかせっきりの白人妻、黒人を友人として扱う白人夫婦など、保守的なタイプからリベラルな人々まで様々な思想信条の白人を活写し、当時の空気を実感させる。やがて黒人が勝利し、ヒリーのような人間は淘汰される運命にあるのは歴史が証言している。だからこそ余計に彼女の考え方をきちんと描き、同じ過ちを繰り返さないように後世に伝えることが大切なのだ。

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