こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ルート・アイリッシュ

otello2012-04-04

ルート・アイリッシュ ROUTE IRISH

オススメ度 ★★★
監督 ケン・ローチ
出演 マーク・ウォーマック/アンドレア・ロウ/ジョン・ビショップ
ナンバー 81
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

彼はなぜズタズタの遺体になって帰ってきたのか。生前に何を伝えたかったのか。“アイツが簡単にやられるはずはない”、その思いから故郷に残った男は親友の死の真相を探りだそうとする。終戦後のイラク、いまだ血なまぐさい事件が絶えず住民も兵士も外国人も不安に脅えている。誰が敵かわからない、安全地帯の外ではいつ襲撃されてもおかしくはない。映画はそんな混沌の中で高給を食む、高度に武装した民間人警備兵たちの闇を暴く。憎悪の連鎖の中、もはや正義などどこにもないのだ。

殉職したフランキーの葬儀で、ファーガスはイラク人運転手の携帯電話を入手する。データを分析すると、フランキーの同僚が現地のタクシーを銃撃し、目撃者の少年たちも含めて皆殺しにする動画が残されていた。

イラク民間人虐殺の動かぬ証拠を目にしたファーガスは背景にただならぬ陰謀を嗅ぎ取り、独自に調査を開始する。関係者に事情を聞く過程で明らかになっていく民間警備兵の無法ぶり。“危険と判断した現地人を殺しても罪に問われない”デタラメな法に守られた彼らがイラクの地を血で染め、裏には「復興ビジネス」の名のもと人命と引き換えにカネ儲けを企む実業家がいる。警備兵の派遣会社はあくまで虐殺の事実を隠ぺいしようとし、フランキーは運が悪かっただけと片付けようとする。学がないと嘆くファーガスは、結局怒りを暴力に昇華させるほかない。無産階級の哀しみが彼の粗暴な行動からにじみ出ていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、フランキーが味方に謀殺された確信を得たファーガスは、派遣会社幹部に対する報復を誓う。紛争地域を離れてもなお続く禍根、そして復讐は自らも滅ぼすことをこの作品は教えてくれる。ただ、ケン・ローチはこれまで好んで労働者階級の悲哀を取り上げてきたが、ファーガスは汚れ仕事で大金を手にしている。ファーガスの気持ちは理解できる、だがいまひとつ感情移入できなかったのは、彼が比較的金銭的に恵まれていたからだろう。。。

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