こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アポロ18

otello2012-04-06

アポロ18 APOLLO 18

ポイント ★★*
監督 ゴンサーロ・ロペス=ガイェゴ
出演 ウォーレン・クリスティー/ロイド・オーウェン/ライアン・ロビンズ
ナンバー 78
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

それには知性があるのだろうか。少なくとも人間を、テリトリーを無遠慮に荒らしまわる敵と認識しているのは確か。背後にはもっと高度な文明を持つ何者かがいて操っているのかもしれない。映画は極秘裏に行われた月面探査計画のネット流出動画を編集し、宇宙飛行士が体験した恐怖を再現する。作為が見えないように丹念に作りこまれたシーンの数々は時系列に沿って構成され、もしかしたら真実を語っているのではないかと思わせる。

アポロ18号の着陸船でクレーター近くに降り立ったネイトとベンは石を採取するが、翌日その石は床に散乱していた。翌日、自分たち以外の足跡を発見した2人は、ソ連の探査機にたどり着く。

国防総省が開発した装置で観測する目的しか聞かされていなかった彼らはさっそく司令部に抗議するが、真の任務については誰も教えてくれない。ソ連船はいつから月に来ていたのか、なぜクルーは死んだのか、さらに設置されたカメラに映った動く物体、ズタズタにされた星条旗、ひっくり返された月面車など、月では知らされていない異変が起きている。そんな中、自分たちの手で情報を探っていかなければならないネイトとベン。やがてネイトの体も未知の病原菌に感染し正気を保てなくなっていく。このあたり、着陸船の狭い閉鎖空間で乗組員たちが垣間見せる焦りや怒りといった感情は、逃げ場がないだけに切実だ。

◆以下 結末に触れています◆

はやりのフェイクドキュメンタリーながら、8ミリ映画風の記録、宇宙船・着陸船内のモニター、乗組員が持つカメラなどの視点の違う映像をつなぎ合わせることで一連の時間の流れが体感でき、彼らの違和感と憔悴が手に取るように伝わってくる。そしてクレーターにうごめく謎の生物が全貌を露わにしたとき、背筋をムカデが這いあがるような不快感を覚えるほど映像が訴えかける感覚はリアルだ。米国がアポロ計画の成果として持ち帰った“月の石”が世界各国に配られるが、ほとんどが紛失されたというオチも皮肉が効いている。

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