こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

HOME 愛しの座敷わらし

otello2012-04-13

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オススメ度 ★★★
監督 和泉聖治
出演 水谷豊/安田成美/濱田龍臣/橋本愛/草笛光子
ナンバー 84
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

風呂の窓からのぞく、手鏡に映る、足音を立てる、掃除機のコンセントを抜く・・・。彼もまた不安で、普通の人間に対する近づき方が分からないのだろう。自分に気づいてほしい、でも怖がられたくない、きっと己が死んだことすら理解していない小さな魂は、必死になって家族の輪に入れてもらおうとしているのだ。映画は、農村の古い民家に移り住んだ一家が、座敷わらしとの交流をきっかけに再び強い絆で結ばれていく過程を描く。森や田畑の緑濃い夏から、稲穂の黄金が波打つ実りの秋まで、季節の移ろいを感じさせるヴィヴィッドな映像が美しい。

父・晃一の転勤で盛岡に引っ越した高橋家。築200年、かやぶき屋根で吹き抜けの大広間と囲炉裏、薪で焚く風呂の新居に妻・史子と長女・梓美は不満顔だが、長男の智也は大喜び。だが、その夜から不審な物音が聞こえ始める。

プロジェクトに失敗し左遷された晃一、学校でいじめにあっていた梓美、ぜんそく持ちの智也、認知症気味の母と、東京における高橋家はマイナス要因に押しつぶされそうになっていた。心機一転、新しい環境でやり直そうとする晃一だが、溝は深まるばかり。そんな時、座敷わらしが彼らの心をほぐしていく。別に害を与えるわけではない、時々いたずらをするだけ。子供たちも座敷わらしに慣れると彼の存在を受け入れ、祖母や史子も「間引きされた子供」という由来を知って本来持つ優しさを取り戻していく。その座敷わらしとの程良い距離感が押しつけがましくなくて心地よい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

座敷わらしと仲良くなったおかげで高橋家の人々にも幸運と明るさと団欒が帰ってくる。晃一は仕事で業績を上げ、梓美も智也も友人ができ、史子と祖母も近所づきあいを楽しむ。囲炉裏を囲んで一家5人が将来について語り合い、家族でいられる時間はそれほど長くないことを確認し合うシーンには、幸せは永遠に続かないけれど、共有した思い出は親にも子供にも大切な財産になると教えてくれる。ただ、座敷わらしは東京の暮らしに順応できるのだろうか。。。

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