台北カフェ・ストーリー
オススメ度 ★★
監督 シャオ・ヤーチュアン
出演 グイ・ルンメイ/リン・チェンシー/チャン・ハン/中孝介
ナンバー 38
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
モノの価値は人の心が決める。たとえガラクタにしか見えないモノでも、別の人間は喉から手が出るほど欲しがるかもしれない。それは、時に具体的な形ではなく、物語の姿していたりもする。映画は、カフェを開いた美人姉妹が客寄せに物々交換を始めると自分だけの大切なモノを探す人々で賑わう展開の中で、人と人のふれあいこそが新たな未来への可能性を紡ぎだす宝物だと訴える。ネットではなく直接交渉し、カネで買うのではなく同じ値打ちの何かを持ちよる。だが、姉妹と客の濃い人間関係をスタイリッシュな映像で見せようとする意向とは反対に、視聴率を気にしない深夜のTV番組のような薄っぺらさばかりが目に付いてしまう。
コーヒーとスイーツを供するカフェをオープンしたドゥアルは、客足が伸びず不機嫌。そんなとき妹のチャンアルに、開店祝いに友人が持ってきたさまざまなオブジェを客の所有物と交換するアイデアが閃き、街にビラをまく。するとツアー客が訪れるほど繁盛する。
客は気にいったモノがあっても、チャンアルが認めるモノを持ちこまない限り手に入れられない。物色し、対価を考えるうちにコーヒーを注文する客が増え、カフェの売り上げも上昇。ところが、日本語の歌「故郷」が掲載された本を日本人の客が所望し彼の歌と交換しようとするシーンでは、その日本人の「故郷」という歌に対する思い出が語られればエピソードとして成立するのに、あっさりスルーする。その他のモノもだいたい同じようなパターンで、店でトレードされるモノに込められたかつての所有者や欲しがる人の思いがまったく伝わってこないのが残念だ。そこを描いてこそ、人生の一場面として劇的な物語として成立するのだが。
◆以下 結末に触れています◆
やがてドゥアルは勉強と世界旅行のどちらを選ぶかを悩みだす。つまり学んでから行動に移すか、行動しながら経験を積むか、理論と実践の岐路に立たされる。結局、若いうちは失敗しても失うものがなくすぐにやり直せるのだから、まずは行動することを選べとこの作品は言いたかったのだろうか。