こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ちりも積もればロマンス

otello2012-04-20

ちりも積もればロマンス

オススメ度 ★★*
監督 キム・ジョンファン
出演 ハン・イェスル/ソン・ジュンギ/イ・サンヨプ/シン・ソユル
ナンバー 88
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

借金のせいで家族を失った女と大学を卒業しても職が見つからない男。過度な競争社会となった韓国、そのスタートラインに立つ前に早々と脱落した男女が生きていくために必死にもがく様子が切実だ。だが、映画は彼らの奮闘ぶりをリアルではなくコミカルに再現することで辛気臭さ打ち消そうとする。女はカネがすべて、男はカネ以外にも日常を充実させる手段はあると楽観的に考えている。そしてふたりの関係を通じて、人はひとりより誰かと支え合う方がきっと幸せになれると訴える。他人から見ればゴミでも実は宝の山、ただ同然で手に入れたモノに価値を付けたり、アイデアグッズをタイミング良く売るといったシーンが楽しい。

就活連敗中のジウンは隣のビルの屋上に住むドけち女・ホンシルと知り合う。ホンシルはコンサルタントに耳打ちされた儲け話をアパートから追い出されたジウンに持ちかけ、ジウンはホンシルの指示通りに日銭を稼いでは貯金していく。

おそらくホンシルは高等教育を受けていないのだろう。それでも実体験から学んだ生活の知恵には恵まれ、ひとり生計を立てるくらいの収入は得ている。一方のジウンは大学で漢文などという実社会ではほとんど役に立たない学問を専攻したため、一般企業の面接ではまともに話を聞いてもらえない。日本以上に就職難、勝ち組と負け組がはっきりと分かれ、一旦負け組に落ちると這い上がるのはほぼ不可能な現状の中で、目標を設定してサバイバルしていこうとする彼らの姿がたくましい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてホンシルはジウンと行動を共にするうちに彼の性格のよさに気づき、ジウンもホンシルの哀しみを知って彼女を理解していく。一度はホンシルの嘘に怒るウジンだが、ホンシルの絶望と母への思いを受け止めてやって彼女の心を開いていく。カネはなくても、やる気とアイデアと一緒に歩んでくれるパートナーがいれば人生は豊かにできる、彼らの未来に希望を示し、行き詰まりの閉塞感から解放されるラストは清々しい後味だった。

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