こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

裏切りのサーカス

otello2012-04-22

裏切りのサーカス TINKER TAILOR SOLDIER SPY

オススメ度 ★★★
監督 トーマス・アルフレッドソン
出演 ゲイリー・オールドマン/コリン・ファース/トム・ハーディ/マーク・ストロング/ジョン・ハート
ナンバー 98
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

誰が売国奴で誰が愛国者なのか。東西冷戦のさ中、英国諜報部中枢の裏切り者を探し出せと命じられた主人公の苦悩は深く果てしない。同僚ではあるが友人ではない、同じ諜報部門の最高幹部であるが信用できず、全員が怪しく見える。次々と明らかになる「見落としていた事実」と、やがて始まる妨害。はたして彼は真実にたどり着けるのか。謎が謎を呼び全員が疑わしい、そんな張りつめた雰囲気はスパイが跋扈した諜報戦の時代を象徴していた。

’73年、ブダペスト作戦失敗の責任を取って英国諜報部・サーカスを辞任したスマイリーに、サーカス内の二重スパイ<もぐら>を見つけよとの命令が下る。部下のピーターが集めた資料と現役工作員の告白、死んだはずの元工作員の証言などを集めるうちに、スマイリーは<もぐら>の目星をつけていく。

当時の国際社会は東西両陣営とも「全面戦争は避けたいがバランスのとれた緊張は保ちたい」と考えており、外敵は防衛予算の確保と国内の結束のための必要悪と双方ともとらえていた。だからこそソ連と西側の政権内部にいる同じ目論見を持つ者同士が密かに手を組み、二重スパイを互いに送り込んで「負けられないが勝ってもいけない」ゲームを続けていたのだ。この物語で最終的に<もぐら>と断定されて暗殺される男も、ゲームのプレイヤーにとっては使い捨ての駒のひとつだったに違いない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

カーラというソ連の大物スパイが持っていたスマイリーのライターは、本当は彼らの友情と信頼の証なのだ。スマイリーはその昔カーラをリクルートしようとして果たせなかったエピソードを披露するが、失敗を強調すること自体、実はスマイリーが今もカーラと水面下で繋がっている証拠。ソ連の情報を英国に流すカーラ、見返りに英国の情報を流していたのはスマイリー、もしかしてこの<もぐら>あぶり出し指令自体が、スマイリーをサーカスに復帰させるための壮大な狂言だったのではないだろうか。映像に描かれた裏の裏を読め、映画は確かにそう呼びかけている。

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