こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プレイ 獲物

otello2012-04-25

プレイ 獲物 LA PROIE

オススメ度 ★★★
監督 エリック・ヴァレット
出演 アルベール・デュポンテル/アリス・タグリオーニ/ステファン・デバク
ナンバー 96
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

殴り合って傷ついてもひるまず、クルマの間を縫うようにすり抜け、銃弾を浴びても立ち止まらない。時にビルから転落し、橋からジャンプし、走行中の列車や車に飛び移る。洗練された格闘技を身につけてはいないが喧嘩にはめっぽう強く、サバイバル訓練を受けているわけでもないのに不眠不休で逃げ回っても疲れを見せない。物語はそんな男が警察に追われながらも妻子を狙う殺人鬼の足取りをたどる過程を描く。スピーディかつダイナミックなアクションの波状攻撃は、主人公の肉体的痛みをリアルに再現し、命の危機にさらされた娘への愛を体現する。

服役中のフランクは、釈放された元同房者のモレルに妻子の保護を依頼しカネのありかを教える。だが、モレルは実は猟奇的殺人者だと判明、フランクは脱獄してモレルの足取りをたどる。

フランクは敏腕女刑事・クレールが指揮する追跡部隊を見事にかわし、逃走を続ける。武器を持たないフランクが頼りに出来るのは打たれ強い身体と底なしのスタミナ。スパイ映画のヒーロー並みの特殊能力ではなく、ただただフィジカルの限界に挑戦するかのような全力疾走の連続には、もはや潔いほどのすがすがしさを覚える。タフネスの一点にのみ超人的な、一見どこにでもいるフツーの体格のオッサンが、知力と体力を総動員して復讐に臨む姿は、人間はここまで強靭になれるというメッセージが凝縮されていた。フランクを演じるアルベール・デュポンテルの苦虫を噛み潰したハンサムとはほど遠い顔の男臭さが渋くてたまらない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

フランクの動きを読んだモレルは妻と共にフランクの娘を連れまわし、自らの殺人の濡れ衣をフランクに着せる。脱獄犯で殺人者、二重の罪を背負わされたフランクは警察に包囲網を狭められるが、決してあきらめず弱気にならずモレルに食いついていく。フランクの秘めた怒りは鬼神のごとき凄まじさすら発散させるが、娘を守ろうとする彼の思いがバイオレンス色の濃い映像に安らぎを感じさせてくれた。

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