こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

捜査官X

otello2012-05-01

捜査官X  武侠

オススメ度 ★★*
監督 ピーター・チャン
出演 ドニー・イェン/金城武/タン・ウェイ/ジミー・ウォング/クララ・ウェイ
ナンバー 106
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

線香を使った目覚まし時計、2階のテラス部分で牛を飼う家屋、手入れの行き届いた道具類。朝早くから家族のために働き、血のつながらない長男にも父親としての愛情を示す温厚で腕のいい職人でもある男。だが、彼の来歴は謎に包まれている。カメラは、凶暴な過去を捨て平穏な暮らしを選んだ男がある事件をきっかけに追い詰められていく姿をとらえる。そんな男の偽りの人生に、妻が“私でなくてもよかったのか”と問い詰める場面に彼の愛と苦悩が凝縮されていた。映画は正体を暴かれた主人公が再び拳をふるうまでをミステリアスなタッチで描き、後半はダイナミックなカンフーアクションに転調する。映像は深く瑞々しい、そしてその視点の定まらなさは最後まで感情移入を拒み続ける。

緑深い村で2人の強盗が紙漉き職人のジンシーに襲い掛かるが、巧みに身をかわすジンシーに撃退されて命を落とす。捜査官のシュウは2人の死体を検死、彼らが高度な暗殺拳によって殺されたと結論付ける。

シュウはジンシーにただならぬオーラを感じ彼の身辺を調べ、村での評判は良いが村に流れてくるまでの事情は誰も知らないことをつかむ。ますます不審に思ったシュウはジンシーを橋から突き落したり刃物で切り付けたりするが、ジンシーは尻尾を見せない。逆に村人はシュウを疎み始め、ジンシーをかばいシュウを非難する言葉を歌にしてシュウに浴びせる。このシーンは辺鄙な村の平和的な習慣を象徴していて、なるべくいさかいを起こさないようにする彼らの知恵と伝統が非常に興味深い。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、ジンシーは西夏族の暗殺団のナンバー2で、組織を足抜けして逃亡中だったのが明らかになる。ジンシーは次々と差し向けられる刺客を返り討ちにした上で裏切りのけじめをつけるために左腕を差し出すのに、実の父でもある教主は許してくれない。刃物を跳ね返す鋼鉄の肉体を持つ教主との戦いは幻想的な様式美に彩られ、目を楽しませてくれた。ただ、先が読めな伝奇小説のようなストーリーの展開には驚きと戸惑いを覚えたが。。。

↓公式サイト↓