こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ももへの手紙

otello2012-05-02

ももへの手紙

オススメ度 ★★*
監督 沖浦啓之
出演
ナンバー 107
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

けんかしたまま死んでしまった父、彼が娘に伝えたかった思いと、少女が彼に伝えようとする思いが交錯し、自分の名が記された手紙が少女の胸に重くのしかかる。どうして大人たちは私の胸の内をわかってくれないのだろう、どうして何でも勝手に決めてしまうのだろう。彼女は殻に閉じこもり不満と孤独を募らせていく。映画は新しい環境に馴染めない少女が、妖怪や人との出会いを通じて成長していく姿を描く。もう小学6年生、大人ではないが無邪気でいられる年齢でもない、そんな年頃の少女の心がリアルに再現されていた。

父を事故で亡くしたももは遺品の中から「ももへ」とだけ記された便箋を見つける。その後、母と二人で瀬戸内の小さな島に引っ越し、古い家に引きこもっていたが、2階の物置で古い妖怪絵巻を見つける。

いつしかももの目には3人の妖怪が見え始め、彼らと会話もできるようになる。もちろん大人の目には映らない。彼らと食料を集めに行ってイノシシに追いかけられたりするうちに、ももは妖怪たちとの間に秘密を共有する者同士が持つ奇妙な連帯感をはぐくむ。そして感情を思い切りぶつけられる友人ができて、ももは変わっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

他者との交流とは、たとえ妖怪であっても相手を慮らねばならないというマナー。腹をすかして盗みを繰り返す妖怪たちと食料を探したり与えたりするうちに、ももは、ひとりぼっちだったのは己の気持ちが分かってもらえないのではなく、他人の気持ちを理解しようとしなかったからだと気づく。子供を愛していない親などいない、だが親にとって子供が世界のすべてではない。人と人は支え合い助け合って生きている。人間関係の密度が濃い島の生活を通じてももはそれを学び、周りへの感謝を忘れないことでももはよりたくましくなる。嵐の夜の大冒険を成功させて、妖怪たちが見えなくてもやっていける程度には彼女も大人になったはずだ。

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