こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

HESOMORI -ヘソモリ-

otello2012-05-10

HESOMORI -ヘソモリ-

オススメ度 ★★*
監督 入谷朋視
出演 永島敏行/渡辺いっけい/石丸謙二郎/中村育二/佐野史郎/谷村美月/烏丸せつこ/中西良太/谷田歩/村田雄浩/若林豪
ナンバー 101
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

一枚ずつ丁寧に漉き、乾かし、仕上げていく和紙。伝統を受け継ぐ職人たちは異界への道の秘密を守る番人でもあった。物語は、福井県山間部の村に代々続く和紙職人だけに言い伝えられた過去と未来を行き来できるトンネルの入り口・へそに偶然足を踏み入れてしまった少年が幕末にタイムスリップするところから始まる。一般人には決して漏れてはならないへその存在が他人に悪用されたとき世界は崩壊する、はずなのだが、映画は大げさに騒ぎ立てたりせず、少年とオヤジになった彼らの活躍でなんとか防ごうとする。未来に行きたいのは自分がきちんと生きたかを確認するため、過去に行きたいのはやり残した後悔を清算するため。そんな人の思いが時空を越えて交錯する。

福井県の山村で紙漉き職人をするさとしは、へそというタイムトンネルの見張りをになっている。少年時代、仲間4人とへそに入ったさとしたちは、幕末で右近と名乗る侍と出会っていた。

一方、へそのパワーに気付いた開発業者がその場所を探してさとしたちと衝突する。もはやへそを隠し通すのは不可能と悟った彼らは、へそを閉じる決意をする。そこに右近や先代のヘソモリ・たけじいらが入り混じってひと悶着起きるのだが、この辺り、子供たちの冒険譚を挿入することでタイムパラドックスをあっさりスルーし、40年以上持続する男の友情にスポット当て、子供のころの気持ちを忘れない大切さを描く。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

住み慣れた街はすっかり変わり果て、忠義を尽くした主君はおらず、師と仰いだ男は銅像になっている。そして見つけたわが名を刻んだ墓碑銘。侍に生まれて大義に身を投じたときから命を捨てる覚悟はできている。それでもやはり死ぬのは怖く、斬られたり撃たれたりしたときの痛みに耐えられる自信がないのだろう。己の運命を知ってもなお武士としての生き方=死に方にこだわらねばならない。現代に現れた右近がさとしの娘に胸の内をこぼすシーンが哀しくも切なかった。

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