こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

貞子3D

otello2012-05-16

貞子3D

オススメ度 ★*
監督 英勉
出演 石原さとみ/瀬戸康史/高橋努/染谷将太/高良光莉/山本裕典/田山涼成
ナンバー 120
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

長い髪に隠された顔はミイラ状に干からび目だけが異様な殺気を放っている。足はバッタの後脚のような形状に巨大化し、二足歩行はできない。恨みのこもった古井戸から這い出すバケモノたちは貞子のイメージとは程遠く、へんてこりんなエイリアンを見ている気分で思わず失笑を漏らした。映画はウェブ動画というビデオの複製とは比較にならないスピードで拡散するソフトに乗り換えた貞子が、己の思念が入るべき肉体を求めてネット上を彷徨する姿を追う。しかし、せっかくの3D化も“飛び出し感”が希薄でまったく楽しめない。せめてPCのディスプレーから髪や手が伸びるシーンだけでもヒロインの主観で立体的に表現すれば、彼女の感覚を共有できたかもしれないが。

女子高教師の茜は、生徒の一人が「呪いの動画」を見て転落死したことにショックを受ける。一方連続不審死を追う刑事の小磯は「呪いの動画」と自殺者の多発を関連付ける。茜は独自に「呪いの動画」を調査するうちに、彼女自身の過去が理由で動画が自分を探していると気づく。

恐怖の実体は何か、観客はすでに皆知っている。そんな厳しい条件下で貞子をより恐ろしい存在として描くのは非常にハードルが高いのは理解できるが、この作品は突然の大音響で驚かすばかり。押し並べてB級テイストてんこ盛りで、和製ホラー得意の“背筋を氷でなでられる感触”とは最後まで無縁だった。唯一スマホからヌーっと生えてくる白い手のみが目新しかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて貞子によって“あちらの世界”に引き込まれた恋人を追って、茜は小磯と共に「貞子の井戸」に向かう。そこから現れた数十体のゾンビ化した貞子と茜は戦うハメになるが、もはや“日本ホラー小説の最高峰”の象徴とは別物に変化している。いや、面白ければそれでも構わないのだが、これほど出来が悪いクリーチャーにされては貞子も浮かばれまい。。。

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