こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

遊星からの物体X ファーストコンタクト

otello2012-06-07

遊星からの物体X ファーストコンタクト THE THING

オススメ度 ★★*
監督 マティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.
出演 メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ジョエル・エドガートン/アドウェール・アキノエ=アグバエ/ウルリッヒ・トムセン/トロンド・エスペン・サイム/エリック・クリスチャン・オルセン
ナンバー 134
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

内部から裏返って体内組織をむき出しにし、体表を破壊して節足動物状の姿に変身する。それでも人間の名残は強く、顔や手足に特徴を残している。細胞レベルで乗っ取って、人体を内側から変質させる感染型の宇宙生物、その本性は地球上の動物を殺して増殖する危険極まりないものだ。しかも、人間の外見をしばらく保持しているので見分けがつかない。通信が途絶え孤立した雪原の基地、映画は逃げ場のない空間で未知のエイリアンに狩られていく越冬隊員の恐怖を描く。

1982年南極、10万年前の氷層から飛行船と氷漬けになったエイリアンが掘り出される。研究者が体細胞のサンプルを採取した後エイリアンは目覚め、隊員たちを襲い始める。ひとりまたひとりと犠牲になるなか、古生物学者のケイトはエイリアンの弱点を探す。

宇宙船を操って地球までやってくるほどの科学力を持つ知的生命体がなぜ原生生物のような方法で繁殖するのかというツッコミはこの際置いといて、得体のしれない怪物がいつ現れるか、そしてもしかしたら仲間の誰かがすでにエイリアンに侵食されているかもしれない疑心暗鬼が作品に緊張感を与えている。そして、エイリアンの、解剖模型風のグロテスクな造形が、少し古臭くさいが“手作り感”があって、CGにはない存在感を示していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

エイリアンは無機物を再生できないことを知ったケイトは、歯の治療痕で人間か否かの確認を取ろうとする。だが、健康な歯やセラミックの歯を持つ者もいる。一瞬の逡巡が命取りになり、また隊員が減っていく。その過程は同工のホラーで何度も使われた演出だが、おどろおどろしい音楽や不意打ちを食らわす効果音でやたら驚かせたりはせず、あくまで正攻法の、つまり現代の水準からみれば手あかのついた手法で描写する。ジョン・カーペンターの傑作に対するリスペクトなのだろう、映像は80年代B級映画の臭気を強烈に放っていた。

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