こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

わたしたちの宣戦布告

otello2012-06-14

わたしたちの宣戦布告 La Guerre est declaree

オススメ度 ★★★*
監督 ヴァレリー・ドンゼッリ
出演 ヴァレリー・ドンゼッリ/ジェレミー・エルカイム/セザール・デセック/ガブリエル・エルカイム
ナンバー 140
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

泣きやまない、すぐに吐く、歩き始めるのが遅いetc。初めて子を持った親ならば“標準”とされている発育と少しでも違うと過剰に気にしてしまう。そして彼らの予想よりはるかに深刻な現実が待ち受けていたら…。カメラは生後18カ月のわが子に悪性の脳腫瘍が見つかった若い夫婦の苦悩と格闘を追う。己の無力に苛立ち、やり場のない怒りを呑み込みながら、夫婦ふたりは協力し合って運命を受け入れ乗り越えようとする。タクシーから街の夜景を眺めるふたりがいつしか愛のデュエットを口ずさむという、場違いだが強烈に印象に残るシーンに、長い戦いに勝つ強い意志が強調されていた。

ロメオとジュリエットの間に生まれた息子・アダムは新生児のころから異常が多くふたりは途方に暮れる。ある日、医者の勧めでCTスキャン検査を受けると脳腫瘍が見つかる。アダムは脳外科の名医に執刀してもらうため入院する。

どこで手術するか議論したり、高い柵に囲まれたベッドからアダムを救いだしたり、病院で感情的になるジュリエットをロメオが諌めたり、空きベッドを探してナースと交渉したり、名医に担当してもらえるよう頼んだりと、幼い患者の両親が直面する様々な問題がリアルに再現される。アダムの頭にメスが入れられる以上、親も覚悟を決めなければならない。ロメオとジュリエットは悲嘆に暮れるより前進を選ぶ。しかし映画はあくまで悲劇とは一線を引き、いつのまにか親子3人の闘病記がスリリングでコミカルなエンタテインメントに昇華されていくあたり、新鮮なエスプリを感じさせてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

悲しい時は笑い、落ち込んだ時は楽しみ、つらい時ははしゃぐ。最初は心配ばかりしていたロメオとジュリエットだが、それでは精神的にも肉体的にも自分たちの方がまいってしまうと考えたのだろう。手を叩くとワインや小皿料理がふたりの間に現れるなど、置かれた状況とは逆の想像をし行動することでバランスを取る姿が切なくも美しかった。

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