こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

一枚のめぐり逢い

otello2012-06-18

一枚のめぐり逢い THE LUCKY ONE

オススメ度 ★★*
監督 スコット・ヒックス
出演 ザック・エフロン/テイラー・シリング/ブライス・ダナー/ライリー・トーマス・スチュワート/ジェイ・R・ファーガソン/アダム・ルフェーヴル
ナンバー 150
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

写真の女は幸運の女神なのか、元の持ち主はどうなったのか、なぜ自分が生き残ったのか。答えを求めて男は故郷を発つ。そしてたどり着いた笑顔の主は深刻なトラブルを抱えていた。映画は一枚の写真に写った女を探す元海兵隊員の旅を通じて、戦争が普通の市民の生活に投げかけた暗い影を描く。戦友に死なれた喪失感と兄を亡くした悲しみ、心に大きな傷を負ったふたりは恋に落ちるが、運命は更なる試練を彼らに与える。憂いを湛えたザック・エフロンの青い瞳が、イラク帰還兵の苦悩を饒舌に物語る。

女の写真を拾ったおかげで砲弾の直撃を免れたローガンは、その後も写真を身に着けていると難を逃れ、無傷で除隊する。帰国後、写真の主・べスを訪ね、彼女が経営する犬訓練所で働き始める。べスは元夫のキースと息子の親権でもめていた。

ローガンは何度も事情を話す機会を逸するうちにベスに魅かれ、打ち明けてしまえば心地よい関係が終わるのではないか、せっかく見つけた居場所が奪われるのではないかと恐れ、なかなか真実を口にできない。己を罰するかのように感情を押し殺して理不尽に耐えるローガンが抱く、死と隣り合わせの戦場を体験した無常観には共感できた。一方でベスに未練を残すキースはローガンの存在が目障りで、事あるごとに警官の職権を乱用して嫌がらせをする。このあたりの展開は予想通りで新鮮味はなく、もう一工夫欲しいところだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もちろん一兵卒にそこまで求めるのは酷だが、ローガンには大量破壊兵器などなかった“間違った戦争”の先兵だったことへの後ろめたさはい。もしべスの兄が無駄死にしていたのなら、この作品もイラク戦争に対する強烈な反省として受け止められたはずだ。むしろ、ベスに女々しく付きまとい権威を振りかざした挙句ローガンにあっさり腕をひねりあげられる、くだらない男の象徴であるキースのキャラが異彩を放っていた。川に落ちた息子を助けるシーンを含めて。。。

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