こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

最強のふたり

otello2012-06-21

最強のふたり Intouchables

オススメ度 ★★★*
監督 エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ
出演 フランソワ・クリュゼ/オマール・シー/オドレイ・フルーロ/アンヌ・ル・ニ
ナンバー 145
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

カネ持ちだからといって媚びず、障害者だからといって同情しない。教養がなく礼儀も知らず思った言葉をズケズケと口にする青年に、うわべだけを取り繕った上流の生活に飽きていた車いすの富豪は新鮮な魅力を覚えていく。物語は首から下が麻痺した男と彼の介護人の交流を通じて、生きる意味とは何かを問うていく。古典美術・音楽の造詣など自分を知的に見せるための虚構にすぎず、感性を絵具に託してキャンバスに塗りたくりダンスミュージックに身を委ねることこそアートの役割だと気づく過程がコミカルで楽しい。そして階級を否定し権威主義を徹底的に笑い飛ばすところが痛快だ。

新しい介護人を募集中のフィリップは、失業手当欲しさに面接に来たドリスを雇う。貴族の屋敷のようなフィリップの豪邸に目を丸くするドリスだが、物おじせず構えない態度をフィリップに気にいられ、他のスタッフとも打ち解ける。

ほしかったのは介護人ではなく友だち。フィリップは障害を茶化してからかうドリスに、まだ誰とでも気軽に胸の内を打ち明けられた少年時代を思い出したに違いない。エリートの道を歩み常に特別な存在に扱われてきたであろう彼にとって、あくまで人として“対等”の姿勢を崩さないドリス。カネはあるがひとりでは何もできないフィリップと、その日暮らしでも自由な発想と健康な体を持つドリスはいつしか分かち難い友情を抱いていく。このあたり、障害者も失業者も、憐れみの目で見られるのがいちばん気分を害するとお互いに分かっているのだろう、遠慮なく下品なジョークを交わし合って爆笑を誘う。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

冒頭のカーチェイスに始まり、フィリップの文通相手との恋、一方でアフリカ移民らしきドリスの貧困といった社会問題をも絡めたエピソードの数々は最後まで興味を引いていく。大空をパラグライダーで駆け巡って魂の解放を感じるシーンに、心のあり方で人生はいくらでも豊かになると実感させてくれる作品だった。

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