こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デンジャラス・ラン

otello2012-06-22

デンジャラス・ラン SAFE HOUSE

オススメ度 ★★★*
監督 ダニエル・エスピノーサ
出演 デンゼル・ワシントン/ライアン・レイノルズ/ヴェラ・ファーミガ/ブレンダン・グリーソン/サム・シェパード
ナンバー 146
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

敵を信じるべきなのか、味方を疑うべきなのか。“稀代の悪党”を武装集団から守りつつサバイバルしなければならない男は、自分だけを頼りにピンチを切り抜けていく。ハンディカメラによる細かいカットの連続とざらついた質感の映像は、絶体絶命の主人公の恐怖と不安、勇気と怒りを再現する。クラッシュの衝撃が伝わるようなカーチェイス、骨がきしむような格闘、臨場感あふれる銃撃戦。映画は命がけの任務を初めて体験する見習い工作員の主観をリアルに描き、観客にもまた彼と同じ感覚を味わせてくれる。

新人エージェント・マットが管理するCIAの隠れ家に米国の元大物スパイ・トビンが連行されてくるが、トビンの身柄を確保しようとする傭兵部隊の襲撃を受ける。トビンの保護を命じられていたマットは彼に手錠をかけ奪った車で逃走する。

大きな活躍がしたくてうずうずしているマットだが、いきなりの実戦に経験不足は否めない。そこに、なぜ居場所がばれたのかという疑心暗鬼を突くようなトビンの言葉にさらに混乱し、雑踏の中でトビンに逃げられてしまう。トビンはその時、「プロしか殺さない」と言ってマットを生かしたままにするが、トビンに半人前と思われたマットの気持ちは想像に余りある。屈辱を晴らすために単独でトビンを探しだし、再び傭兵に追い詰められたトビンを救出してトビンの信頼を勝ち取ろうとする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

トビンはマットに裏切りと欺瞞に満ちた諜報の世界の実情を話し汚れた仕事を生業にする覚悟を問い、マットはトビンの卓越した力量に尊敬の念を抱き始める。立場が正反対の奇妙な師弟関係、後半は2人の間に芽生えた感情をより深めていく。そして黒幕は誰かを探る過程で、結局現場の工作員は使い捨てにされる駒のひとつに過ぎないことが明らかになっていく。国家への忠誠は正義や良心とは両立せず売国奴は身近なところにいるCIAの歪んだ現実。人をだまし時に暗殺も厭わない、そんな人生を送ったトビンの心情が切なさを誘った。。。

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