こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

強奪のトライアングル

otello2012-07-10

強奪のトライアングル 鐵三角

オススメ度 ★★*
監督 ツイ・ハーク/リンゴ・ラム/ジョニー・トー
出演 ルイス・クー/サイモン・ヤム/スン・ホンレイ/ケリー・リン
ナンバー 164
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いわくありげな3人の男、密会中の妻と刑事。それぞれが腹に一物を抱えやるせない日々を送っている彼らの前に、一攫千金のチャンス巡ってくる。強奪、逃走、騙し合い、やがて胸に芽生えた疑心暗鬼が予期せぬ運命に彼らを導いていく。映画は3人の監督が演出を担当しリレー形式でひとつなぎの作品にするという前代未聞のアイデアのもと、スリルとサスペンスに満ちた映像にいろどられる。光より陰、友情よりも裏切り、愛よりも欲望。それらが充満する世界には、香港映画にしか描けない追い詰められた男たちの哀しみがあふれていた。

サン、フェイ、モクの3人が宝石強盗の話をしていると謎の老人が現れ、名刺と金貨を置いていく。名刺から老人のサイトを調べると、財宝の隠し場所が記されていた。3人は図面を元に地下から盗掘、唐代の女性貴族の棺と副葬品を手に入れる。

サンの妻・リンは悪徳刑事と不倫中、ファイはチンピラから狙われている身、モクも借金で首が回らない。発掘した金の衣を纏ったミイラの前でお互いに勝手に写真を撮り合うシーンは彼らの悪意を予感させ、刑事に脅されたサンが猛スピードでクルマを運転する場面は思わずのけぞる迫力。また、警官の前で何度もロータリーを回ったりと彼らの心の動きを見事に視覚化する。ひとり占めにしようとする人間の本性が顔をのぞかせる一方、金衣を刑事に奪われたくない、そんな足元の危うい状況で物語は予想もしない方向に走り始める。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

刑事に金衣を横取りされた3人はリンを連れて追跡するが、その過程でタイヤをラリッたオッサンにパンクさせられ、奇妙な水上レストランに辿り着く。しかしそこで繰り広げられるのは、電気を切って真っ暗な中荷物をすりかえたり、背の高い葦原で鬼ごっこするなど、下手なドタバタ喜劇のような展開。ツイ・ハーク部分のノワール、リンゴ・ラム部分のアクションと流れがよかっただけに、ジョニー・トー部分の構成が雑になってしまったのが残念だ。

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