こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

人生、いろどり

otello2012-07-13

人生、いろどり

オススメ度 ★★★*
監督 御法川修
出演 吉行和子/富司純子/中尾ミエ/藤竜也/平岡祐太/村川絵梨/戸次重幸
ナンバー 171
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

さびれゆく山間部で細々とミカンを栽培する人々。不作の年は野菜を植え生活の足しにしようとするが、中国産に押されて将来の展望は暗い。そして、独居老人、老々介護、農業の衰退、若年人口の流出も止まらず残っているのは年寄りばかりといった現実。映画は、そんな問題だらけの農村で葉っぱを商品にして現金収入の道を開いた老人たちの夢と希望を丁寧に追う。アイデアとやる気があれば年齢など関係ない、むしろこれ以上失うものがないという開き直りが彼女たちを大胆にさせ、それまでと違った生き方を模索してく過程が楽しく頼もしい。

農協職員の江田は、和食店で刺身のツマに添えられる葉っぱを見て、新たなビジネスが閃く。早速村の寄り合いで提案するが賛成してくれたのはみかん農家の薫と雑貨屋の花恵の2人の老婆だけ。彼女らは幼なじみの路子を加えて、売り物になる葉っぱを研究する。

最初は「いまさら意味はない」と言っていた路子も、いつしか偽りの仮面を脱ぎ捨てて協力する。一方、古臭いタイプの農夫でくだらないプライドにすがりつく薫の夫・輝雄はあくまでも妻が始めた事業に反対する。この2人のキャラクター設定により、単なる「地方の村おこし映画」とは一線を画し、物語は奥行きの深い人間ドラマとしての味わいを出している。やがて、裏山に自生している葉っぱでも季節を先取りしてきちんと形をそろえて出荷すれば、必要としている飲食店が必ずあると確信した薫たちは、ビニールハウスを作って商売を広げていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もちろんそう簡単に儲けが出るわけはなく、失敗と試行錯誤の連続、思わぬ事故に見舞われたりもする。それでも、夫の束縛から逃れたい薫、現状を打破しなければと願う花恵、亡き父への思いを果たしたい路子、3人の熱意が徐々に開花していく。おそらく何十年ぶりなのだろう、彼女たちが働いて手にしたカネで髪を手入れし洋服に身を包んで街を颯爽と歩く姿は、女が欲しいのは “自分で人生にいろどりを添える力” だと雄弁に物語っていた。

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