こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヘルタースケルター

otello2012-07-17

ヘルタースケルター

オススメ度 ★★★*
監督 蜷川実花
出演 沢尻エリカ/大森南朋/寺島しのぶ/綾野剛/水原希子/新井浩文/鈴木杏/寺島進/哀川翔/窪塚洋介/原田美枝子/桃井かおり
ナンバー 177
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

肉体が崩れていく。心が壊れていく。孤独は恐怖となり焦りは怒りとなって、周囲の人々に言葉の刃として突き刺さる。物語は全身整形美容手術で時代のアイコンになったヒロインが、頂点から転げ落ちる過程を追う。夢は叶えた、欲しいものはすべて手に入れた。しかし、指の間から砂がこぼれおちるようにそれらは彼女の元から去っていく。真実は誰にも打ち明けられない、だから余計に陰湿な仕打ちとなって身近な者を苛んでいく。外見を変えれば女は変わる。いや世間の女を見る目が変わるからこそ、女は自信を持ち高慢になり残酷にもなりうる。女にとって美しさは強さであることを、この映画は強烈に描き切っていた。

整形手術後遺症の黒アザに悩まされている超売れっ子モデルのりりこは、マネージャーの美知子をいたぶってうっ憤を晴らしていた。ある日、天性の才能に恵まれたこずえが現れ、りりこのポジションを脅かしはじめる。

毒々しいまでの赤と過剰に装飾されたサウンドがりりこの精神状態を象徴する。彼女はショービジネスの寵児として大衆に求められマスコミに崇められ女王のごとく振る舞うが、虚栄が長く続かないのを承知で生き急いでいるよう。消費され、いつか消えていく運命のはかなさをひしひしと感じながら、今の地位に必死でしがみつこうとする姿が痛々しい。そして感情を美知子にぶつけ、まだ自分のわがままが聞いてもらえるかどうか確認している。そんな人間の哀しい性を、沢尻エリカが圧倒的な存在感で演じていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてこずえにグラビアクィーンの座を奪われたりりこは忘れられていく。だが、美知子の裏切りによって図らずもメディアの話題を独占する。白いドレスに身を包み記者会見に臨むりりこは一種の神々しささえ備えているが、その無垢なイメージを再び自らの血で真っ赤に染め上げてしまう。おそらく整形して芸能界デビューする前は「ブス」と相手にされなった彼女の、切ないほどの情念が見事に開花していた。

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