こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

セブン・デイズ・イン・ハバナ

otello2012-07-18

セブン・デイズ・イン・ハバナ 7 DIAS EN LA HABANA

オススメ度 ★★*
監督 ベニチオ・デル・トロ/パブロ・トラペロ/フリオ・メデム/エリア・スレイマン/ファン・カルロス・タビオ/ギャスパー・ノエ/ローラン・カンテ
出演 ジョシュ・ハッチャーソン/ウラジミール・クルス/エミール・クストリッツァ
ナンバー 149
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

豊かではないが活気にあふれ、社会主義国なのに閉塞感はない。土着の呪術もあればキリスト教への深い信仰もある。夢を追って海外に渡ろうとする者もいればこの島の暮らしを気にいっている者もいる。小さな島国でも多種多様な人がいて、その数だけ人生がある。映画はキューバの首都・ハバナを訪れた外国人のつかの間の体験と地元民の風土に根差した生活に密着し、さまざまな人間のある一日を切り取る。短編ながらもきちんと起承転結のあるエピソードからヤマもなければオチもない観客を突き放したものものまで一貫したテーマはなく、共通項はハバナを舞台にしていることだけ。カストロの存命中に西側資本の映画が撮影された事実がいちばんの収穫なのだ。

7話あるうち第4話がもっとも完成度が高い。スペイン人プロデューサーに認められたクラブ歌手がスペインに誘われるが、同棲相手の野球選手と別れる踏ん切りがつかない。とっくに夢をあきらめた恋人を置いて自分だけ羽ばたくべきか、この男についていくか。朝、荷物をまとめて出ていこうとするが女に気づきながらも男は眠っているふりをしている。女はそんな男と最後にベッドで添い寝する。出ていくのか行かないのか、男女の微妙な機微が繊細なタッチで描かれていた。

6話目にもこの歌手が登場し、今度こそ国を出る決意をする。だが、スペイン人が用意した航空券ではなく、小さな筏でカリブ海にこぎ出す。その隣には恋人がいる。彼女は恋人ににもう一度希望を取り戻させ、勝負するのを見守る選択をしたのだ。さらに彼らの船出を遠くから見送る女の両親。去る者と留まる者、親と子の愛情、そういった感情が複雑にシンクロする出発シーンだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、セリフがほとんどない4話目は茫洋としてつかみどころがなく、5話目の暗い映像は穢れ落としの行為は見えてもその意味が分かりづらい。いずれにせよ、米国を敵視しつつもホテルでは米ドルを両替できるし、たいていの人は英語を話す。キューバが再び米国経済に組み込まれるのも時間の問題の気がする。そうなってもキューバの良さは残っているだろうか。。。

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