こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カルロス CARLOS 第二部

otello2012-07-27

カルロス CARLOS 第二部

オススメ度 ★★★
監督 オリヴィエ・アサイヤス
出演 エドガー・ラミレス/アレクサンダー・シェアー/アフマド・カーブル/ノラ・フォン・ヴァルトシュテッテン/ジュリア・フンマー/クリストフ・バッハ/タラル・エル・ジョルディ
ナンバー 161
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

要人が集まる会議室にずかずかと踏み込み、自動小銃を突き付けて人質に取る。しかし、「アラブの大義」と言いつつも、実際はイラクの先鋒となって動いていたにすぎない。もはや自分たちの理想よりも、活動資金を得るためのテロ。しかも彼らを世直しのヒーローと期待していた世界中の支持者にも、単なる人殺しに過ぎない本性が知られてしまう。第二部では、古い同志との決別と新しい支援者を探して、さらに筋の悪い独裁国家の手先に落ちていくカルロスの姿を描く。

サウジとイランの石油相の暗殺を目論むカルロス一味はウィーンのOPEC総会に乗り込み、各国使節を旅客機に乗せてアルジェリアに飛ぶ。その後リビアに逃げる手はずだったが、リビア随行員を射殺しため追い返される。結局、サウジから莫大な身代金を受け取って逃亡する。

顔が知れ渡り、ヨーロッパでは身の隠しどころがない。一方でソ連イラク、シリアといった反西側の国々ではますます利用価値が認められていく。その過程で一緒に戦ってきた西ドイツのグループとは袂を分かつ。カルロスの行為は革命とはほど遠く、自己顕示欲に陥っていることを見抜かれたからだろう。そして共闘してきたドイツ人のアンジーが手記を発表し武力闘争から足を洗ってしまうと、カルロスの暴走を誰も止められなくなっていく。そんな中、カルロスもまた複雑な国際情勢の中では使い捨ての効く駒の一つでしかない事実が徐々に明らかになっていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

まだこの時点では、カルロスを裏切る者はなく、カルロスも仲間を見捨てたりはしない。ところが、PLFPのリーダー・ハダトが彼を除名し、後ろ盾を失ったあたりから、テロを起こすためなら誰とでも組むという節操のなさを見せ始める。だが、ソ連から依頼されたサダト暗殺計画も冷戦のパワーバランスの中で中止を求められるなど活動を封じられていく。武器を得て人を殺して、既成の概念から自由になったはずが、まわりまわって己の首を絞める皮肉がカルロスの人生を象徴していた。

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