こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ボーン・レガシー

otello2012-08-11

ボーン・レガシー THE BOURNE LEGACY

オススメ度 ★★★*
監督 トニー・ギルロイ
出演 ジェレミー・レナー/エドワード・ノートン/レイチェル・ワイズ/ジョアン・アレン/アルバート・フィニー/デヴィッド・ストラザーン/スコット・グレン
ナンバー 193
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

凍てついた川の底にもぐり、酷寒の雪原を走り、むき出しの岩山を登り、谷を飛び越える。その鍛え上げた強靭な肉体とあらゆる感情を抑えた冷静な精神は、飲み薬によって維持されている。人間の限界を超えるために政府機関によって生物学的に改造された殺人マシーン、だが、モラルに反する計画がばれるの恐れた上層部が彼の抹殺を図る。映画はウイルスによって遺伝子レベルから強化された特殊工作員が、包囲網をかいくぐって自ら完璧な人間兵器となりサバイバルしようとする姿を描く。壁を軽やかに登り屋根の上を跳び、アクセルを全開にするアクションの連続は息つく間もない緊迫感にあふれている。

ジェイソン・ボーンの出現で暗殺者養成計画を破棄しようとする国家調査研究所のリックは、最後の生き残りのアーロンにも魔手を伸ばす。アーロンはロケット弾直撃寸前に逃れ、以前彼の血液サンプルを採取した研究者のマルタを訪ねる。

マルタもまたリックの組織から狙われ間一髪アーロンに助けられる。もはや頼れるのはお互いのみ。アーロンは得意の偽装工作でリックの追手をかわし、空港に向かう。何が起きているのか分からないが、確実なのはじっとしていては殺されるということ。そんな状況で情報の断片をつなぎ合わせてリック率いる国家権力の裏をかき真実に迫る過程は、ミステリアスであるとともにスリリング。ただ、中盤まではフィジカルなリアルさにこだわるあまり派手さに欠け、短いカットをつないでかろうじてテンポを保っている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが、究極の心身増強ウイルスを注射したアーロンが超人的なダイナミズムを身につけると、一気にギアチェンジする。バラック小屋が迷路のようにひしめくマニラのスラム街を疾走し、アーロンと互角の能力を持つ刺客に追われ、バイクで渋滞の道路を縫うように激走し、急停止し、方向転換してまた急加速するチェイスは瞬きするのも忘れる臨場感。「ボーン」の名をタイトルに冠した以上最高のクオリティを求められる作り手側の熱意とアイデアが見事に開花した作品だった。

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