こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミラクル ツインズ

otello2012-08-15

ミラクル ツインズ THE POWER OF TWO

オススメ度 ★★★
監督 マーク・スモロウィッツ
出演 アナベル・ステンツェル/イサベル・ステンツェル・バーンズ
ナンバー 199
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

幼少時から手術を繰り返し、胸部や腹部に深く刻まれた生々しいメスの痕を見せる一卵性双生児の姉妹。それは先天的難病と闘ってきた彼女たちの生の証でもある。映画は満足に呼吸ができない病気の双子姉妹の闘病記録を通して、待ち続ける辛抱強さと希望を失わなず解決法を探す勇気を描きつつ、医療における臓器移植の現状をレポートする。胸いっぱいに空気を吸い込み吐き出す、生きるために必要な当たり前の動作を意識せずできる幸せをこの作品は実感させてくれる。

根本的治療法がない遺伝病・(CF)を持つイサとアナ。ほとんど学校に通えず病院で過ごしてきたが、入院生活を克明な日記とイラストに著し出版する。その後、米西部の名門・スタンフォード大に移り、適合する肺を探す日々が始まる。

新鮮な肺を提供されるにはウエイティングリストの上位に名を連ね、ドナーが脳死しなければならない。それでも米国では移植システムが比較的洗練されているので、イサ・アナともに無事肺の移植手術を受け、普通の暮らしができる程度には回復している。しかし日本では脳死に対する文化的背景と法整備の後退から米国から30年遅れているといわれている。母が日本人であるイサとアナは彼女たちの手記の出版プロモーションで日本を訪れたとき、自らも生体肝移植のドナーとなった河野太郎議員にインタビューするが、日本で臓器移植が難しい理由が彼の言葉でよく理解できた。後の臓器移植法改正にも、イサとアナの訪問は少なからぬ影響を与えていたに違いない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

当然ながら彼女たちはドナーへの感謝を忘れない。ドナーは死んでも、臓器は他人の体の一部となって役立っている。遺族にとってこれほど気持ちの休まることがあるだろうか。「難病に負けずに頑張ってます」的な感動の押し売りを極力避けた語り口はあくまで軽妙だが、命は人から人へと受け継ぐものであり、その大切さをあらためて考えさせらた。

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