こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロラックスおじさんの秘密の種

otello2012-08-16

ロラックスおじさんの秘密の種 DR. SEUSS' THE LORAX

オススメ度 ★★★
監督 クリス・ルノー
出演 ダニー・デヴィート/エド・ヘルムズ/ザック・エフロン/テイラー・スウィフト
ナンバー 200
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

道路や建物だけでなく木や花まで人工物でできた町、住人はそれが清潔で快適な暮らしと信じていて、悪辣な企業家から新鮮な空気を買わなければならないことに疑問すら抱いていない。強権国家を連想させるような、情報を操作され現状に満足させられ人々と、富と権力を独占する独裁者。映画はそんな町に木の種に象徴される希望を持ち帰ろうとする少年の姿を通じ、行動を起こさなければ何事も始まらないと訴える。彼が操る一輪バイクの走りがダイナミックかつスリリングで、めまぐるしいアクションと時にミュージカル仕立ての構成が、自然環境を保護するのは結局人間の生活を守ることだというもう一つのテーマから説教臭さを消している。

植物がない町に住むテッドは本物の木が欲しいと言う女の子のために、町はずれで隠棲するワンスリーを訪ねる。テッドはワンスリーに昔話を聞かされるうちに、木を植え育てる使命に目覚めていくが、彼の動きが町の実質的支配者オヘアの耳に入る。

ワンスリーはかつて成功を夢見る企業家だったが、森の木の葉から作った織物が大ヒット商品となり、工場を増設し大金持ちになっていく。その過程で森の木の精・ロラックスと「木を伐らない」と約束していたが、強欲に負けてしまう。切り株だらけの森、枯れ果てた草花、肩を落として去っていく動物たち。それは現在進行形で地球上のどこかで起きている悲劇、命を奪われた草木と住処を追われた動物たちの悲哀が再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ロラックスは物言わぬ木の代弁者だと言う。強制力はなくただ恨めし気な視線を送るのみで、目先の利益に捕らわれてしまったワンスリーには森の木々の気持ちが伝わらない。そして現実に気づいたとき、というより、気づかぬふりが通用しなくなったときには手遅れになっている。それでも、人間は反省しやり直す勇気もまた備えている。それをテッドに託して、あくまで人間の理性に期待を寄せる作品の姿勢は心地よかった。

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