こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

I’M FLASH!

otello2012-09-04

I'M FLASH!

監督 豊田利晃
出演 藤原竜也/松田龍平/永山絢斗/板尾創路/北村有起哉/中村達也/大楠道代
ナンバー 219
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“死を恐れて生きるな、死は究極の救い”という若きイケメン教祖。だがその本性は、彼もまた死を受け入れる勇気がない気弱な青年。教義を明確な言葉に変換して大衆を導いていく“表の顔”は、所詮作りものなのだ。物語はそんな男が飲酒運転で交通事故を起こしてしまい、教祖を辞めると言いだした後に起きる、教団内でのもめ事を追う。しかし、そこで描かれるのは、新興宗教のシステムや信者との葛藤、信仰や神の存在を問うといったありふれたものではなく、あくまで同乗者に重傷を負わせた主人公の心の変遷。教祖であっても操り人形でしかない彼の実体が哀しい。

バイクをはねた上、助手席の女を昏睡状態にしてしまった教祖のルイは、教団によって匿われている。彼を警備する3人の殺し屋と共に時間を過ごすうちに、事故の直前に女が打ち明けた過去が彼の脳裏にこだまする。

ルイは植物状態になった女を遺憾に思うが、だからといって贖罪するわけでもなく、ただ家族によって軟禁され暇を持て余しているうちに自らの人生を見つめ直すのみ。3人の殺し屋たちはルイの胸中を想像したりもするが、積極的に関わろうとはせず距離を置いているのは、雇われた本当の目的がルイの警護ではなく暗殺だと気づいていたからだろう。ルイも父や祖父が実は殺されていたと知って、自分の運命を悟る。そのあたり、お互いの些細な言動から相手の真意を探りあうなど、もっと心理的な駆け引きを見せれば緊張感が保てたのだが。。。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

多くの人を殺してきたはずの殺し屋が人の死とどう向き合ってきたのか。他人の命を奪うことにいかなる感情も湧かなくなったのか。それらをルイが彼らに質していれば、死に対する回答が得られたかもしれないが、映画はその命題になぜか深く踏み込もうとしない。死を恐れるなと言っていたルイが必死で生きようともがく滑稽さだけが新興宗教の胡散臭さを象徴していた。

オススメ度 ★★

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