バレエに生きる〜パリ・オペラ座のふたり
UNE VIE DE BALLETS
監督 マレーネ・イヨネスコ
出演 ピエール・ラコット/ギレーヌ・テスマー/ルドルフ・ヌレエフ/イヴェット・ショーヴィレ/アニエス・ルテステュ
ナンバー 167
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
まるで月面でジャンプしているような滞空時間の長さとしなやかな着地、操り人形のように両足を細かく複雑に交差させるステップ、指先から爪先まで使って優雅な動きで体現する喜怒哀楽。その肉体の柔軟さと軽さはもはや重力を凌駕した境地に達し、人間業とは思えないほどの浮遊感を醸し出す。パリ・オペラガルニエ、バレエの聖地ともいえるこの場所でかつて最高峰をきわめた2人のダンサーが語る彼らの過去は、20世紀後半のバレエ界を象徴する。若き日のチャレンジ、修業の日々、成功、そしてコンテンポラリーからクラシカルに回帰していく過程は、流行は繰り返すことを証明している。
幼いころ父に連れられて行ったオペラ座で「ジゼル」を見たピエールはダンサーへの道を選ぶ。カサブランカのバレエ教室に通っていたギレーヌは、ソ連のバレエ映画に感銘を受けバレエに人生を捧げる決意をする。ふたりはピエールが作ったバレエ団で出会い、結婚する。
映画は別々に収録されたふたりのインタビューをもとに、膨大なアーカイブを紐解いていく。ピントの甘い古いモノクロフィルムから21世紀の最新パフォーマンスに至るまで、それは映像として記録に残っているバレエの歴史そのもの。時代が下るにつれ他のジャンルのダンスの影響を受けているのが分かる。もちろん半世紀近く前の振り付けでも、当時のモードを取り入れているのだろう、それでも現代の感覚から見れば“古典的”という感じがしてならない。あらゆる芸術表現に共通することだが、バレエの進歩もまた、基礎は守りつつもより斬新なアイデアと高度なテクニックへの挑戦の積み重ねなのだ。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ただ、現在のふたりの独白シーンのみならず、アーカイブ映像にも頻繁にブロックノイズが入るのには閉口。ダンサーたちの優美な動きがモザイクがかったようになり、せっかくの美しいダンスが楽しめなかった。もっときちんとした機材で制作してほしかった。
オススメ度 ★★