こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マヤ ― 天の心、地の心 ―

otello2012-09-21

マヤ ― 天の心、地の心 ―
HERZ DES HIMMELS DER ERDE

監督 フラウケ・ザンディッヒ 、 エリック・ブラック
出演
ナンバー 231
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

緑に覆われていた大地は赤茶けた土がむき出しになり、密林だった山は雑草しか生えていない。井戸は涸れ、清流は汚され主食の穀物ですら奪われていく。かつて天文学を発達させ正確な暦を作るために壮大なピラミッドを建造した中米のマヤ文明、スペイン人らの侵略によって簒奪された民族のわずかな生き残りは山中で細々と暮らしていたのに、今またグローバリゼーションの波に住処を追われようとしている。映画は文明社会と距離を置き、自然と神と精霊と祈りの中で静かに生きるマヤ族の人々の現在をレポートする。

トウモロコシの原産地であるメキシコ高原地帯に住むマヤ族は遺伝子組み換えトウモロコシの脅威にさらされている。グァテマラの高地では金鉱山の開発が進み、現地のマヤ族は環境汚染に苦しんでいた。

黒、白、茶、赤など、黄色い粒がそろったものしか流通していな日本とは違い、多様な色の粒が美しい宝石のような輝きを放つマヤのトウモロコシ。マヤ神話にある“神がトウモロコシを人にした”という一説にある通り、彼らにとっては聖なる作物なのだ。それを多国籍企業は単なる金もうけの手段として遺伝子レベルで改良する。金鉱山ではシアン化合物が住民の健康を蝕んでいるのに、国も企業側も知らぬふり。そんな現実を、映画は決して扇情的にならず、マヤの人々に淡々と現状を訴えさせることで、先進国の豊かさの代わりに何が犠牲になっているのかを考えさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

とはいえ、よほどの革命的な技術革新や先進国の意識転換が起きない限り、マヤ族の滅びゆく運命は変わらないだろう。その日がマヤ暦の終末の日なのか? いや、きっと2012年12月21日は何事もなく過ぎるはず。そして、神聖な暦の予言がはずれてマヤ文明とマヤ族の存在感はますます薄くなる。そうならないためにも各地に分散したマヤ族が団結して抵抗の声を上げているのだが、それ はどれだけ先進国に届いているのか。生まれたばかりのウミガメを海に帰し、成長した彼らがいつか戻ってくるのを待つごとくに、マヤ族の人々は次世代に希望を託しているのようだった。

オススメ度 ★★*

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