こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語

otello2012-09-29

シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語

監督 ジェームズ・キャメロン/アンドリュー・アダムソン/アーロン・ワーナー
出演
ナンバー 239
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

スピーディでダイナミックな男性パフォーマー、しなやかで優美な女性パフォーマー。極限まで鍛え上げられた彼らの肉体が表現する芸術は、重力のくびきから解放された自由を謳歌しているかのよう。その驚異的な身体能力の高さは人間技とは思えないほど洗練され、加えてそれらのパフォーマンスに与えられた物語はイマジネーションあふれる幻想的な空間に見る者をいざなう。映画は、異界に迷いこんだ少女のめくるめく冒険を元に、アートサーカス“シルク・ドゥ・ソレイユ”の壮大でファンタスティックな世界を堪能させてくれる。

町はずれで興行するサーカスにふらりと足を踏み入れた少女は、空中ブランコ乗りに心を奪われる。しかし、ブランコ乗りは演技中に落下、そのまま砂地獄に沈んでしまう。

ブランコ乗りの後を追った少女が落ちたところは大きな月が夜空に輝く砂の惑星。テント小屋でピエロに誘われ、幕を開けるといきなり円形プールでのショーが始まる。シンクロナイズドスイミングとダンスを融合した水中の舞いは、まるで人魚のカーニバル。その後、両端に大きな円筒を固定した巨大シーソーでは信じがたいバランス感覚を持った男たちが高速で回転する輪の中で跳び、走り、芸を見せる。さらに垂直に立てた壁での格闘アクションは、「マトリックス」の特撮を彷彿させる現実離れした光景だった。そしてトランポリンの反発を利用しためまぐるしい動きは早送で見ている錯覚に陥る。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

無人の三輪車に導かれ、やっと再会した少女とブランコ乗りは、ロープにつかまって空中を散歩し、お互いの体に手足を絡ませて喜びを全身で体現する。ドキュメンタリーでもなくドラマでもない、まったく斬新かつクリエイティブなアプローチの映像化は、もはや何も考える必要はない。ただ、スクリーン上で繰り広げられるスペクタクルと音楽に身を委ねているだけで幸福な気分になれる、稀有な体験だった。

オススメ度 ★★★

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