こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

恋のロンドン狂騒曲

otello2012-10-13

恋のロンドン狂騒曲
YOU WILL MEET A TALL DARK STRANGER

監督 ウディ・アレン
出演 アントニオ・バンデラス/ロジャー・アシュトン=グリフィス/ジョシュ・ブローリン/ポーリーン・コリンズ/アンソニー・ホプキンス/ジェマ・ジョーンズ/フリーダ・ピント/ルーシー・パンチ/ナオミ・ワッツ
ナンバー 252
批評 自分にはもっと素晴らしい生き方があったのではないだろうか? きっかけさえあれば停滞した日常から抜け出せると閃いた老夫婦と中年夫婦の男女4人は、それぞれに恋することで過去と現在を清算し薔薇色の未来へのステップを踏み出そうとする。映画はそんな彼らが古い配偶者を捨て新しい恋人を作り、人はいくつになってもやり直せると説く。しかし、ロマンチックな時間が持続するのはわずかな期間、彼らがその後雑事難事に悩まされる姿を描いて現実は甘くないとくぎを刺す。ウディ・アレンの視点はシニカルでコミカル、所詮人間なんてこんなものだと笑い飛ばす。

アンチエイジングに目覚めたアルフィは40年連れ添った妻・ヘレナと別れ、元コールガールと結婚する。彼らの娘・サリーは作家志望の夫・ロイに愛想をつかし画廊オーナー・グレッグに接近、ロイは窓越しの美女・ディアに声をかける。

アルフィは若い妻を手に入れ、サリーもグレッグといい感じになり、ロイは婚約者がいるディアを口説き、ヘレナもオカルトじいさんと意気投合する。パートナーを変えた途端に世界がカラフルになり、そのときめきがビビッドで、相手のちょっとした言葉や仕草や反応にさまざまな解釈を加えるシーンがほほえましい。一方で絶え間ないあてつけと愚痴と悪口の応酬は彼らの幸せな状態が長続きするはずがないと予感させ、ままならない人生を象徴する。

ネタばれ注意! 結末に触れています

そして、すべてが思いこみとカン違い、彼らが恋と思っていた感情は、相手にとっては単なる好意や打算だったのが明らかになっていく。唯一ロイだけはディアの心を揺さぶるが、それ以上にのっぴきならない事態に追い込まれていく。物語は「薬より幻想が効く」という言葉通りに展開するが、その効能は短く、結局以前より状況は悪化するばかり。4人の営みを俯瞰するこの皮肉たっぷりの喜劇は、アレンがもはや円熟を過ぎ悟りの境地に入ったと宣言しているようだった。それにしても、イギリスのバイアグラは5分で効果が現れるのか。。。

オススメ度 ★★★

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