こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

009 RE:CYBORG

otello2012-10-18

009 RE:CYBORG

監督 神山健治
出演 玉川紗己子/小野大輔/斎藤千和/大川透/丹沢晃之
ナンバー 256
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

「正義」とは、今やその単語を口にする者にとっての真実でしかなく、対立する他者の「正義」は排除すべき邪念。価値観が混沌とした現代、世界中で起きるテロの連鎖は未曽有の様相を呈し、もはや人の叡智では解決できない。そこは神の領域なのか。いや、神ですら人間の脳が作った幻覚、ではいったい何がテロリストたちの意識を支配し行動に至らしめたのか。映画は、そんな世の中で、人としての理性と感情を残したままパワーを強化されたサイボーグ戦士たちが、哀しみに満ちた闘い続ける姿を描く。そして、何故自分は存在するのか、生きているのか、自らのアイデンティティを繰り返し問う主人公を通じて、人生の意味と自己犠牲の美しさを謳う。

世界各地の大都市で高層ビルが相次いで爆破テロの標的にされる。やがて六本木ヒルズもミサイル攻撃を受けるが、現場にいたジョーは003と005によって009の能力を覚醒され、ギルモア博士の元に召集される。

ギルモア博士と袂を分かった002は米国政府のスパイになり、同じく英国諜報員となった008からテロの実行犯はみな「彼の声」を聞いたという情報を得る。一方で、国際社会に緊張状態をもたらして影響力を高めようとするイスラエルと米国の陰謀説も飛び交う。事件のカギを握る金髪の少女と天使の化石、更なる混迷と混沌の中で、新たな破壊を止めるべく009たちが奮闘する。ビルの倒壊、高速飛行のステルス機上での格闘などのアクションシーンは、3Dで再現された細密で圧倒的な情報量の映像で視界を覆い、研ぎ澄まされたサウンドが臨場感をもたらす。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

「彼の声」とは「神の声」なのか。人類は異なるステージに進化していくのか。そのためには一度地上を一掃しなければならないのか。このあたり展開が速すぎるうえ理論の飛躍もありよく理解できない部分もある。だが、“この時のために生かされてきた”という009の言葉は、サイボーグが、いやサイボーグだけでなくすべての人間に生まれてきた理由があることを教えてくれる。命がけで守るべきもの、それはやはり命なのだ。

オススメ度 ★★★

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