こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

人生、ブラボー!

otello2012-10-26

人生、ブラボー! STARBUCK

監督 ケン・スコット
出演 パトリック・ユアール/アントワーヌ・ベルトラン
ナンバー 263
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

簡単な仕事も満足にできず、アパートに帰れば取り立て屋が待っていて、妊娠中の恋人にもフラれてしまう。どうしようもないろくでなし、でも、不思議と人の心を和ませる魅力を持っている中年男。映画は、精子提供でできた“生物学上の子供たち”に「父親に会う権利」を突きつけられた主人公が、さまざまな出会いと交流を通じて生きる意味を問うていく姿を描く。人間なんて元々不完全、だが補い合い助け合って情が育まれ、人生を豊かにしていく。そんな、欠点を否定的にとらえないカメラの視線が優しさに満ちている。実の父を知らずに育った青年の“生まれてきたことこそ幸せ”という言葉に、かけがえのない命への思いが凝縮されていた。

若いころ精子ドナーをしていたダヴィッドは、142人の子供たちから身元開示請求を受ける。最初は拒んでいたが、子供の一人が有名なサッカー選手とわかると他の子供たちにも興味が湧き、正体を隠して彼らの前に現れる。

役者志望、ギター弾き、元ヤク中、プール監視員、ネイル店員など、成人した子供たちの職業は様々だ。目標を追う者、いまだ将来を模索中の者、やり直そうとする者、しっかりと地に足がついた者。ダヴィッドは彼らに寄り添い、時に手を貸していく。ダヴィッド自身半人前なのに、子供たちを見守り彼らのために一肌脱ごうとするのは、失敗を繰り返しても父や兄弟から見捨てられなかった経験が下地になっているのだろう。また、子供たちが“同じ父親”の絆を大切にしていると気づくと、障害者の子供をキャンプに参加させたりする。自分の行為は決して間違っていなかったと思いつつも、世間の偏見に悩まされるダヴィッドのうろたえぶりが笑いを誘う。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ドナーとしての報酬を、両親の夢だったベネチア旅行に使うようなダヴィッドの思いやりは、すべての子供たちに受け継がれ、それはきっと彼と恋人の愛の結晶である赤ちゃんにも遺伝しているはず。人と人とのつながりが人を成長させる、あたたかい未来を予感させる作品だった。

オススメ度 ★★★★

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